抄録
アンプリチュードヒストグラムの原理を応用した下顎安静位決定法を考案し,Hellmanの歯年齢IIA期の正常咬合を有する小児28名における下顎安静位の決定を試みた。そして,適切な下顎安静位誘導法の探索とそれによって得られる安静位空隙量を測定し,その誘導法の確実性について評価した。また,同時期の前歯部反対咬合症例10名の下顎安静位も調査し,咬合誘導の機能分析法に利用可能かどうか検討した。
1.Hellmanの歯年齢IIA期の小児の下顎安静位決定に,アンプリチュードヒストグラムの原理を用いる方法が有効であった。
2.術者の指示に従うことの困難な小児でも,アンプリチュードヒストグラムを用いることで下顎安静位を決定することができ,誘導法としては任意の下顎安静位誘導法しか有効でなかった。
3.正常咬合症例の安静位空隙量の平均値は各年齢で嚥下後安静位が最も小さく,開口後安静位が最も大きくなる傾向がみられた。また,増齢に伴い安静位空隙量の平均値および分散は小さくなる傾向にあった。
4.適切な下顎安静位誘導法は年齢ごとに異なっていた。3歳では任意の下顎安静位,4歳では嚥下後安静位と任意の下顎安静位,そして5歳では嚥下後安静位であった。
5.骨格型反対咬合症例の安静位空隙量は正常咬合症例の安静位空隙量より有意に小さかった。一方,機能型および混合型反対咬合症例の安静位空隙量は大きい傾向が示唆された。