抄録
幼若永久歯の小窩裂溝に対する齲蝕予防填塞材料として開発されたリン酸四カルシウムセメント(4CPセメント)の理工学的性質およびエナメル質におよぼす影響について検討した。また,萌出途上の第一大臼歯を対象として,ヒト口腔内における4CPセメントの歯への保持状態を調べた。その結果,4CPセメントは牛歯エナメル質に対してきわめて強い接着性を示すだけでなく,同エナメル質に人工的に形成された白斑病巣に対して明確な再石灰化作用を促すことが示された。また,4CPセメントはヒト口腔内においても,エナメル質に強く接着し,長期間保持することが明らかとなった。以上の結果は,萌出途上の第一大臼歯の齲蝕予防填塞材として4CPセメントが十分に応用できる可能性の高いことを示唆している。