抄録
Gambirはインドネシアをはじめとする東南アジアで古くから嗜好性咀嚼物として習慣的に用いられているアカネ科植物で,同時に齲蝕予防効果もあることが伝えられている。今回著者らはGambir水抽出物のミュータンスレンサ球菌由来のグルコシルトランスフェラーゼ(GTase)による不溶性グルカン合成阻害作用およびミュータンスレンサ球菌に対する抗菌作用,in vitro における歯垢形成抑制について検討を行った。その結果,Gambir水抽出物は実験に用いた7種類のミュータンスレンサ球菌標準株のいずれの粗GTaseに対しても不溶性グルカン合成を阻害し,その合成阻害率はGambir水抽出物の濃度依存性に上昇し,0.625mg/mlで平均24%,10mg/mlで平均55%であった。また,いずれの菌株に対しても弱い抗菌作用を示し,そのMICは3.75~7.5mg/ml濃度であった。抜去歯を用いた歯面への歯垢形成はGambir水抽出物の添加により抑制される傾向を示した。以上の結果よりGambir水抽出物は齲蝕予防に効果をもたらす可能性を有していることが示唆された。
さらに,Gambirにはタンニンが多く含まれていることから,これを除去した場合についても検討した。その結果,タンニン除去画分は低濃度(2.5mg/ml濃度以下)ではいずれの菌株のGTaseに対してもほとんど不溶性グルカン合成の阻害を示さなかったことから,Gambir水抽出物の歯垢形成抑制作用の活性成分は主にタンニンであることが推測された。