小児歯科学雑誌
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岩手医科大学小児歯科外来における小児疾患の実態について
駿河 由利子野坂 久美子甘利 英一
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1996 年 34 巻 5 号 p. 1017-1028

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抄録

生活環境や食生活の変化によって,小児が罹患する疾患も多様化して来ている。また,これらの疾患は,小児の口腔内の状態や歯科治療時の対応に大きくかかわっていることから,今回は,小児疾患の実態について調査を行った。対象は,岩手医科大学歯学部小児歯科外来を訪れた1298名であり,資料として初診時の問診表と健康記録,問診にて作成した初診録を用いた。これらの資料を下に,既往的疾患から現疾患に至るまでを調査し,次の結果を得た。
1)疾患別罹患状態では,ウイルス感染症が57%で最も多く,アレルギー性疾患は38%認められた。
2)ウイルス感染症は6歳未満に多く,種類では水痘が多かった。
3)細菌感染症は0-3歳未満で多く罹患し,中でも肺炎は細菌感染症の中で51.4%を占めていた。
4)アレルギー性疾患は,3-6歳未満が最も多かった。また,アレルギー性疾患の半数以上がアトピー性皮膚炎と湿疹であった。
5)喘息や食物,薬物アレルギーは,他のアレルギー性疾患との併発が多く,しかも加齢的に増加していた。
6)歯科処置時にアレルギー様症状が認められた9例中6例は,アトピー性皮膚炎の既往があった。また,大半の小児が歯の形成時期に種々の小児疾患に罹患し,アレルギー性疾患は,同一小児に対して加齢的に種々の形で出現しているため,歯科治療時には,十分な問診が必要である。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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