抄録
児童の食嗜好を検討する目的で,北九州市内の公立小学校に通学する3年から6年までの児童,男児1,336名,女児1,248名,計2,584名を対象に,質問票による調査を行った。全般的に野菜の嗜好度は低く,学年の上昇につれて,その傾向はより顕著であった。動物性食品は植物性食品と比較して,一般的に高い嗜好度を示し,特に肉においてその傾向は顕著であった。食品別では,ヨーグルトや果実類に著しく高い嗜好度が示された。学年間における各食品に対する嗜好度の変動は,ニンジン,生魚,パン,インスタントラーメン等に顕著であり,学年の上昇に伴い,嗜好度の著しい低下が認められた。性別による嗜好度の違いに有意差は認められなかった。学年間で偏食の多寡に関する比率に著しい変動は認められず,多いと回答した率は15%前後であった。
今回の結果から,現代の食生活上の問題点が散見される一方,一部の食品を除き,学年間における嗜好状況の変化はほとんど認められなかった。また,生魚や特定の野菜を嫌う傾向は学年の上昇に伴って顕著になっていることからも,より早い時期における「食育」の必要性が示唆された。