抄録
Hand-Schuller-Christian病は組織球系細胞の増殖を特徴とし,骨病変,眼球突出,尿崩症を三主徴とする。歯科的には,口腔粘膜の炎症,歯の動揺や脱落,顎骨の腫脹・疼痛などが報告されているが,いずれも発病中の所見である。今回我々は,本疾患の治癒後に歯列不正,永久歯萌出遅延を主訴に来院した,13歳1か月女児の一症例を経験し,以下のような所見を得た。
1)身長・体重は標準値の-2SDを下回っており,骨年齢は暦齢に比べ2年程遅れていた。
2)中顔面部の劣成長が認められた。
3)全ての第一大臼歯は萌出が遅延していた。
4)下顎第二小臼歯の位置異常が認められた。
5)〓〓〓に認められた歯根の形態異常,〓〓〓に認められた形態異常・形成不全の発症時期は,患児の顔面神経麻痺や丘疹の発症時期とほぼ一致していた。
6)下顎第二小臼歯,第二大臼歯の病理組織学的検索では,エナメル質の部分的な欠如や象牙細管の走行の乱れが認められた。