抄録
本研究は実験1として味覚感受性が加齢に伴ってどのように変化するか,および実験2として成長期における味の学習が成長期以降,味覚感受性にどのような影響を与えるかを知る目的で行った。実験にはマウス(ICR,SAM P-1)を用い,行動学的実験(二瓶法)と電気生理学的実験(鼓索神経味応答)の二方法で週齢を追って比較検討し,以下の結論を得た。
実験1.行動学的実験結果から塩味,酸味,苦味に対しては加齢に伴い味覚閾値が上昇を認めた。甘味に対しては変化は認められなかった。電気生理学的実験からは塩味にのみ,加齢に伴う閾値の上昇を認めた。
実験2.通常飼育したマウスに比べ,10週齢まで特定の味溶液で飼育したマウスでは,行動学的実験から,その特定の味溶液に対してのみ閾値の上昇を認めた。電気生理学的実験結果からは両群の味応答に差は認められなかった。
以上の結果から,加齢に伴う味覚感受性の低下は末梢味覚受容器の変化よりも,上位の中枢の関与による可能性が示唆された。