抄録
九州大学歯学部附属病院小児歯科を受診した乳歯列反対咬合者の上顎歯列の治療前後の変化について検討した。被蓋改善に用いた装置はチンキャップ,FKO,リンガルアーチ,上顎前方牽引装置である。これらの4装置について歯列石膏模型を用いて被蓋改善前後の上顎歯列,口蓋の表面積,容積の三次元変化を比較し,以下の結果を得た。
1)歯列弓形態の概形は,チンキャップ群,FKO群には変化はみられなかった。これに対しリンガルアーチ群は歯列弓周長,歯列弓長径の増加による歯列弓の伸長化を,上顎前方牽引群は歯列弓周長,歯列弓長径の減少による歯列弓の扁平化を示した。
2)口蓋の表面積および容積全体は,チンキャップ群,FKO群,リンガルアーチ群は増加,上顎前方牽引群は減少していた。チンキャップ群,FKO群において前方部表面積は増加していたが,前方部容積は減少傾向を示し,上顎前方牽引群において後方部表面積は若干増加していたが,後方部容積は減少傾向を示した。
3)歯列弓幅径においてチンキャップ群,FKO群,リンガルアーチ群,上顎前方牽引群とも変化率は小さく4装置間に差は認められなかった。