小児歯科学雑誌
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ビリルビン着色歯の経年的観察を行った1例
甲原 玄秋柴田 敏之五十嵐 清治佐藤 研一
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1997 年 35 巻 5 号 p. 959-964

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抄録

1歳の男児が下顎乳中切歯の着色を主訴に千葉県こども病院歯科を紹介され受診した.出生直後,播種性血管内凝固症候群を生じ,出血傾向著明で,出生後10日まで頻回の交換輸血が行われ,その間血清総ビリルビン値は20~59.6mg/dlと高値を示していた.既往からビリルビン着色歯と診断した.
齲蝕予防に努め経過観察を行ったところ,萌出した全ての乳歯に緑色の着色をみた.その着色の範囲は乳前歯は歯冠部の4/5におよび,第2乳臼歯は咬頭頂に限局し,後方歯になるに従い着色は小範囲に限局した.
しかし,3歳6か月ころには緑色は減弱した.5歳6か月では著明な退色をきたし,淡い黄色を示すのみとなった.
交換期のため脱落した乳前歯の研磨切片では象牙質内に着色帯が観察された.さらに象牙質内の着色帯は546nmの波長の光源で蛍光を発した.分光光度計分析において着色歯はビリルビンが示す吸光度曲線と相似した曲線を描き,ビリルビンが含有されていることが証明できた.
以上より高ビリルビン血症により生じた緑色の着色歯は高ビリルビン血症が消失した後,次第に色調が変化してくることが判明した.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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