小児歯科学雑誌
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噛みしめ型FKO適用状況と効果の検討
宮川 尚之森主 宜延岸本 匡史小椋 正
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1998 年 36 巻 4 号 p. 595-603

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抄録

本研究は,上顎前突の治療に用いている噛みしめ型FKO(B-FKO)の適用・撤去の判断,および臨床的効果を明らかにすることを目的とする。対象は,B-FKOを適用した男児8名,女児13名である。検討資料は,カルテ,咬合模型,側貌頭部エックス線規格写真の角度・距離計測値である。装置適用者のうち下顎の前方劣成長が認められる症例が61.9%,下顎の劣成長が認められない症例が38.1%であり,それぞれ下顎の成長促進と咬合の挙上を目的としていた。
装置装着年齢は平均9歳10か月,撤去年齢は平均11歳5か月であり,適切に装置を使用した者は61.9%であった。撤去の理由は,期待した効果が得られたためとしていたものが61.9%,使用状況が悪く,効果が期待できないことを理由としていたものが38.1%であった。装置適用者を適用目的で下顎の成長促進群と咬合の挙上群に分類し,顎顔面の骨格形態を正常者と比較すると,促進群では上下顎骨の前後関係により,挙上群では歯軸傾斜によって上顎前突が示されており,撤去時にそれらの項目の改善傾向が認められた。
しかし,上顎前突の傾向は示されたままで,正常咬合者群の標準値まで達していなかった。また,撤去時の判断は単純に不正要因の解消だけなく,軟組織形態の変化に対する視覚的な判断の影響が示唆された。撤去時から撤去1年後までの変化に対する定性的評価では両群とも上下顎の前後的関係において後戻り傾向が見られた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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