抄録
6歳から11歳までの中国人女児双生児85組の半縦断的側貌頭部エックス線規格写真を資料とする形態学的研究を行い,顎・顔面頭蓋形態の成長様式を最近の日本人小児と比較検討し,また遺伝的要因の多寡を推定して以下の結論を得た。
1.平均身長曲線において,6歳では中国人女児が3cmほど高く,7歳以降日中女児の差は僅かであった。
2.角度的計測項目において,SNA,SNBは日中女児間で大きな差はないものの,中国人女児の下顎骨後下方部の形状は,ステージ3からすでに日本人成人女性の形状に近かった。
3.量的計測項目において,中国人女児は上顔面部と下顔面部の奥行きの差が日本人女児よりも少なく,相対的に下顎骨が大きい顔立ちであった。
4.プロフィログラムの重ね合わせから,中国人女児は日本人女児よりも顔面前方部で凹凸がより少なく,前方部全体がより直立した形状である印象を受けた。
5。前脳頭蓋底と鼻腔底平面の深さの遺伝力はステージ4で低下するものの60~70%台であり,下顎骨の高さや外形の遺伝力はステージ5が最も高く,70~80%台であった。
6.以上から,日中女児の混合歯列期における顎・顔面頭蓋形態の主な相違は下顎骨後下方部の外形と大きさにあり,それらには遺伝的要因が強く関与していると推定された。