小児歯科学雑誌
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口蓋部裂傷を生じた幼児の3例
甲原 玄秋佐藤 研一
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1999 年 37 巻 3 号 p. 626-630

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抄録
乳幼児においては,運動機能の未熟さ,あるいは生理的未熟さから転倒しやすく,その際口腔外傷を受けることがある。この度,幼児における口蓋粘膜損傷を3例経験した。
第1症例は2歳2か月の男児で,笛で遊んでいたところ転倒した。笛により硬口蓋粘膜は25×35mmの範囲に剥離し,口蓋骨の露出をみた。このため,局所麻酔下で12針の縫合を施行し,21日後に抜糸でき良好な経過をとった。
第2症例は2歳11か月の男児で,菜箸を口に入れ転倒し,軟口蓋にそれが刺入していたため,箸を抜去した。同部には鼻腔側に貫通する創が認められたため,局所麻酔下に2針縫合した。6日後に抜糸を行い経過良好である。
第3症例は1歳男児で,じょうろの尖端を口に入れ転倒した。軟口蓋に直径15mmの半円形の裂創を生じ,口腔と鼻腔は交通していた。局所麻酔下に2針縫合し,16日後に抜糸を行い良好な経過をとった。
幼児における緊急治療時に全身麻酔を使用することは1)乳児の気道確保の困難性,2)胃内に食物残渣があることを考慮すべきこと,3)短時間では全身状態の評価が行い難いことなどのため,ある程度の危険性を伴う。一方局所麻酔下での処置では乳児の体動のため縫合は困難であり,針の誤飲,破折などの危険性を伴う。以上両者に優劣は付け難いが,適切な対応をすれば局所麻酔下で処置できる症例は多く,その場合は術後管理にリスクは少ないと思われる。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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