抄録
小児の外傷固定に用いるフッ素徐放性のガラス繊維強化型スプリント材を試作し,その機械的性質とフッ素イオンの溶出を評価するとともに,操作性や除去性について検討した。その結果以下の知見を得た。
1.フッ素イオンの徐放源としてフッ素樹脂(PMF)を配合した試作スプリント材の曲げ強さや曲げ弾性係数はPMFを含まないコントロールと同等の値を示した。
2.PMFを配合した試作スプリント材の曲げ強さおよび曲げ弾性係数は水中浸漬後も低下しなかった。
3.試作スプリント材からのフッ素イオンの溶出量は1日後で量大値を示し,その後は徐々に減少したが,PMF40を20wt%配合したスプリント材が最大の溶出量を示した。
4.操作性の指標とした粘着性は,調製後の日数の経過とともに減少し,市販のコンポジットレジンに比べて著しく小さな粘着力を示した。
5.試作スプリント材の酸処理エナメル質への接着強さはおよそ18MPaであり,その破壊様式はすべてボンディング材内部あるいはスプリント材とボンディング材との境界部近傍でのレジン凝集破壊であった。
6.試作スプリント材のブリネル硬さは市販コンポジットレジンのおよそ1/2であった。
7.試作スプリント材の吸水量は約2mg/cm2でマイクロフィラータイプのコンポジットレジンとほぼ同程度の値であった。
8.試作スプリント材はコンポジットレジンに比べて著しく切削量が多く,切削除去が容易であることが示唆された。