本研究は,吸啜から離乳食への移行期間と,その後3歳児および成人における咀嚼運動について,咀嚼運動リズムと咀嚼筋筋協調パターンの観点から検討を行った。吸啜群(23名)をコントロールとし,1群は6,7か月児(14名)を,2群は8,9か月児(14名)を,3群は10か月-1歳児(8名)を,4群は1-2歳児(7名)を,5群は3歳児(13名)を,また6群は成人(10名)を対象とした。被検食品は米飯をそれぞれの年齢に併せて用いた。
1)乳児は,離乳食開始問もない頃より既に視覚的に食物を認識後,開口動作,摂取動作,咀嚼様運動,嚥下運動の順で咀嚼を行っていた。
2)サイクル時間と持続時間は,1群から3群で有意に長く,その後4群から6群で有意に短くなった。
3)離乳期乳児は舌骨上筋群の活動が活発で,側頭筋と同時に活動する様相が認められた。そこで筋協調パターンを側頭筋と舌骨上筋群の筋活動から,持続的舌圧接型,周期的舌圧接型および成熟型の3型に分類した。
4)持続的舌圧接型の占める割合は1群で最も高く,2,3群で次第に減少し,4群以降では著明に減少した。一方,周期的舌圧接型は1群から4群までは共通して50%以上と高かったものの,その後は減少していた。
5)成熟型の咀嚼パターンは,成長発育に伴い明瞭に増加していた。
以上の結果より,離乳初期では舌を活発に使用し,閉口筋と同時に活動する咀嚼パターンが観察されたが,離乳の進行と成長発育に伴い,顎閉口筋である側頭筋・咬筋と,開口運動や食物の転送に携わる舌骨上筋群との機能の分離が進み,次第に咀嚼機能が成熟することが示唆された。
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