小児歯科学雑誌
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低位乳歯に対する萌出余地回復法の効果に関する研究
星 仁史石川 美和子守安 克也
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1999 年 37 巻 5 号 p. 1031-1046

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抄録
混合歯列期に低位乳歯がみられ,それに隣接する第一大臼歯の近心傾斜によって後継永久歯の萌出余地不足をきたした4症例に対して,第一大臼歯の近心傾斜を改善し,低位乳歯や後継永久歯の萌出余地を獲得することを目的に萌出余地回復処置を実施した。これらの4症例について,エックス線写真や研究用模型で経年的に臨床観察を行い,萌出余地回復法の低位乳歯に対する改善効果について検討を加えた。
症例1では,上顎左側第二乳臼歯が低位であり,隣接する第一大臼歯の歯軸傾斜を改善したところ,対合歯と咬合関係が得られるまでに再萌出した。症例2では,上顎左側第二乳臼歯が低位であり,隣接する第一大臼歯の歯軸傾斜を改善したところ,咬合面全体を確認できるまでに再萌出した。症例3では,下顎左側第一および第二乳臼歯が低位であった。隣接する第一大臼歯の歯軸傾斜を改善して経過を観察したところ,後継永久歯の発育に伴いこれらの歯の歯根吸収が進行した。第一乳臼歯が脱落した後,第一小臼歯は萌出したが,第二小臼歯は先行乳歯の抜歯と開窓術を行った後,正常な位置に萌出した。症例4では,上下顎左側第二乳臼歯が著しく低位にあり,とりわけ下顎第二乳臼歯は完全に埋伏していた。これらの歯に対して萌出余地回復処置を実施中に上顎第二小臼歯は歯槽骨内萌出運動を示し,下顎第二乳臼歯は後継永久歯の発育による歯根吸収をきたした。
以上の所見から,低位第二乳臼歯の萌出余地回復のために,隣接する第一大臼歯の歯軸傾斜の改善を行うことにより,混合歯列期にみられた低位乳歯の再萌出と後継永久歯の萌出を促し得ることが示唆された。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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