小児歯科学雑誌
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乳歯萌出と咀嚼筋活動の変化から検討した乳幼児期の咀嚼発達
林 寿男仲岡 佳彦小山 和彦田村 康夫
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2002 年 40 巻 1 号 p. 32-45

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抄録

乳幼児期における咀嚼発達を検討する目的で,吸啜期G0をコントロールとして,離乳食開始からの進行状態によって,離乳初期G1,離乳中期G2,離乳後期G3,離乳完了期G4,さらに3歳児をG5,成人をG6とし,米飯咀嚼時における各群の筋電図学的特徴を横断的に比較検討した。その結果,1)側頭筋と咬筋の筋活動量は離乳食開始から次第に大きくなっていた。口輪筋はG1で著明に増大したものの,G2ではG0と同程度になっていた。それに対し舌骨上筋群は,G5を除き吸啜時とほとんど差はみられなかった。2)口輪筋を除く3筋の総筋活動量を検討すると,G0からG2までは一時増大し,G3で一度低下したものの,その後は次第に増大していた。3)総筋活動量に占める3筋の活動割合で変化をみると,側頭筋はG1からG3にかけて低下するが,G3を出発点に側頭筋の占める割合は有意に大きくなっていた。また舌骨上筋群の占める割合はG1からG3で増大した後は,G3を境に次第に低下していた。4)離乳期から幼児期前半においては,歯の萌出に関係なく咀嚼は発達していた。しかし乳歯咬合が完成するG5では筋活動量は著明に増大していた。
以上より,離乳開始間もない頃は舌骨上筋群の活動は相対的には低下しており,閉口筋の活動は増大していることが明らかとなった。また離乳開始4か月から6か月頃(G3)に一時総筋活動量が低下する現象がみられたが,G3以降はほぼ一貫して側頭筋活動の割合は増大し逆に舌骨上筋群活動割合は低下していたことから,G3の時期に咀嚼運動の変換点が存在し,この時期が成熟型咀嚼パターンの開始点に相当することが示唆された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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