小児歯科学雑誌
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40 巻 , 1 号
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  • 大東 美穂, 嘉藤 幹夫, 大東 道治
    2002 年 40 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の乳歯の処置内容が当該乳歯の生理的歯根吸収(以下,歯根吸収とする。)過程,脱落時期,後継永久歯歯胚の石灰化過程および萌出時期を把握することを目的とし,大阪歯科大学附属病院小児歯科外来に来院した4,5,6歳時の下顎第一乳臼歯(以下,乳臼歯とする。)を対象として,診療録,石膏模型,エックス線写真(口内法およびパノラマ)を用い経年的に観察し調査した結果,以下のことが明らかとなった。
    1.乳臼歯の歯根吸収時期には,感染根管治療後根管充填を施した乳臼歯(以下,感染根管治群とする。),麻酔抜髄根管充填を施した乳臼歯(以下,麻酔抜髄群とする。),生活歯髄切断を施した乳臼歯(以下,生活歯髄切断群とする。),歯冠修復のみで歯髄除去療法を施していない乳臼歯(以下,歯冠修復群とする。),脱落まで何らの処置も施さなかった乳臼歯(以下,無処置群とする。)の順に平均年齢が低かった。
    2.乳臼歯の脱落時期に関しても,歯根吸収状態と同様の順であった。
    3.下顎第一小臼歯(以下,後継永久歯とする。)歯胚の石灰化過程に関しては,各処置群において差は認められなかったが,感染根管治療直後と乳臼歯抜歯直後に石灰化度が一時的に増加した。
    4.後継永久歯の萌出時期は,歯根吸収状態と同様の傾向が認められたが,低年齢時抜歯群の場合では萌出時期は少し遅くなり,高年齢時抜歯群の場合では少し早かった。
  • 磯貝 美佳, 松村 祐, 新井 康司, 中垣 晴男, 外山 敬久, 渥美 信子, 山本 ゆう, 河合 利方, 青山 哲也, 土屋 友幸
    2002 年 40 巻 1 号 p. 10-18
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Er:YAGレーザーが歯質に及ぼす影響についての研究は,歯質の切削が可能な高エネルギー照射に関するものが多く,低エネルギー照射について検討したものは少ない。
    そこで著者らは,Er:YAGレーザーを小窩裂溝填塞法の前処理へ臨床応用することを目的とした基礎的研究として,レーザー照射が表層下エナメル質に及ぼす影響について検索を行った。
    表面形態観察から低エネルギー照射量を50mJ/pulseに設定し,偏光顕微鏡および走査電子顕微鏡を用いてレーザー照射エナメル質の縦断面の観察を行った後,さらにその耐酸性と硬度について検討を行い,以下の結果を得た。
    1.レーザー照射部直下に,偏光顕微鏡では偏光性の異なる層が観察され,SEM観察ではコントラストの異なる層が認められた。
    2.レーザー照射後のエナメル質の溶出Ca量は,対照群に比べ,明らかに少なかった。レーザー照射により,エナメル質表層の耐酸性が向上するだけでなく,表層下においても耐酸性が向上していた。
    3.超微小硬度の測定では,20μm・40μm・60μmの深さにおいて,レーザー照射群の硬度は対照群に比べ,明らかな低下を示した。
    以上,本レーザーの低エネルギー照射は,エナメル質表面の形態変化を起こすだけでなく,表層下エナメル質にも構造や物性の変化を起こし,耐酸性が向上すると同時に,硬度低下を招くことが明らかとなった。
  • 飯田 哲也, 坂 英樹, 井出 吉信
    2002 年 40 巻 1 号 p. 19-31
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯の歯根吸収状態を把握することは,乳歯の治療を行うにあたり大変重要なことである。小児歯科臨床において,歯根の状態を診査する手段は歯科用エックス線撮影が一般的であるが,エックス線写真から歯根の吸収状態を明確に判定することは困難であり,現在に至るまで乳歯歯根の吸収形態,吸収方向等は,依然不明な点が多い。そこで下顎乳切歯に注目し,歯根吸収と後継永久歯との関係を明らかにするため,乳歯および永久歯の萌出状態により5期に区分した当教室所蔵のインド人小児乾燥下顎骨20顆を,極微小焦点エックス線CT装置(Micro-CT)を用いて撮影し観察を行った。
    中切歯,側切歯の骨小嚢は,先行乳歯の舌側に位置し,萌出相の推移とともに上下的には上方に成長し,乳歯歯根の舌側半分から根端にかけて近接することにより吸収が認められた。
    乳歯列期に加えて第一大臼歯が歯槽頂に達した時期(StageV)では,乳中切歯の歯根吸収が進行し,根管に及ぶ吸収が認められた。
    中切歯骨小嚢が,近遠心的に成長することにより,乳側切歯歯根近心面の吸収が認められた。Micro-CTで撮影した下顎乳切歯歯根と後継永久歯の骨小嚢との関係を明確にするために,歯根面-骨小嚢間の距離を計測した。
    歯牙萌出相の推移に伴い,乳中切歯,乳側切歯の歯根舌側面と骨小嚢との距離は近づき,乳側切歯では,側切歯より中切歯の骨小嚢との距離が近いことが観察された。
  • 林 寿男, 仲岡 佳彦, 小山 和彦, 田村 康夫
    2002 年 40 巻 1 号 p. 32-45
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳幼児期における咀嚼発達を検討する目的で,吸啜期G0をコントロールとして,離乳食開始からの進行状態によって,離乳初期G1,離乳中期G2,離乳後期G3,離乳完了期G4,さらに3歳児をG5,成人をG6とし,米飯咀嚼時における各群の筋電図学的特徴を横断的に比較検討した。その結果,1)側頭筋と咬筋の筋活動量は離乳食開始から次第に大きくなっていた。口輪筋はG1で著明に増大したものの,G2ではG0と同程度になっていた。それに対し舌骨上筋群は,G5を除き吸啜時とほとんど差はみられなかった。2)口輪筋を除く3筋の総筋活動量を検討すると,G0からG2までは一時増大し,G3で一度低下したものの,その後は次第に増大していた。3)総筋活動量に占める3筋の活動割合で変化をみると,側頭筋はG1からG3にかけて低下するが,G3を出発点に側頭筋の占める割合は有意に大きくなっていた。また舌骨上筋群の占める割合はG1からG3で増大した後は,G3を境に次第に低下していた。4)離乳期から幼児期前半においては,歯の萌出に関係なく咀嚼は発達していた。しかし乳歯咬合が完成するG5では筋活動量は著明に増大していた。
    以上より,離乳開始間もない頃は舌骨上筋群の活動は相対的には低下しており,閉口筋の活動は増大していることが明らかとなった。また離乳開始4か月から6か月頃(G3)に一時総筋活動量が低下する現象がみられたが,G3以降はほぼ一貫して側頭筋活動の割合は増大し逆に舌骨上筋群活動割合は低下していたことから,G3の時期に咀嚼運動の変換点が存在し,この時期が成熟型咀嚼パターンの開始点に相当することが示唆された。
  • 日比野 麗子, 宮内 啓子, 桑原 康生, 桑原 茂久, 永石 恵子, 中原 弘美, 森本 容子, 長谷川 信乃, 樂 嗣勛, 田村 康夫
    2002 年 40 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    社会生活や生活環境の異なる日本人小児と中国人(上海市)小児について咬合力,身長,体重,最大開口量の比較を行い,さらに咬合力増大に関わる要因として年齢,身長および体重との関連について検討した。
    その結果,咬合力については男子が女子と比較して強い咬合力を示し,女子においては中国人小児が日本人小児と比較して各年齢とも有意に強い咬合力を示した。一方,最大開口量は,増齢に伴う増加傾向を認め,日本人小児が中国人小児よりも大きな値を示した。また咬合力は日本人小児および中国人小児ともに年齢と高い正の相関を示したが,身長および体重との有意な相関関係は認められなかった。
    本調査より,日本人小児よりも中国人小児の方が咬合力は強いことが認められ,咬合力の増大には小児の年齢や生活環境が関与していることが示唆された。
  • 野村 玲子
    2002 年 40 巻 1 号 p. 54-63
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    EL/Seaマウス(以下ELマウス)は性差無く97%の出現率で4本全ての第三臼歯が欠如している。このELマウスと歯数に異常のないMSM/Msfマウス(以下MSMマウス)との交配実験から,ELマウスにおける第三臼歯欠如は常染色体劣性遺伝であると報告されているが,歯の欠如の原因は未だ明らかにされていない。今回の実験の目的は,ELマウスにおける第三臼歯欠如の原因遺伝子の位置する染色体とその領域を見つけることである。このため全常染色体上に配置されたELとMSMマウス間とで多型を有する有益な50個以上のマーカーを用いて,第三臼歯欠如を有する10匹のF2 intercrossマウス[(EL×MSM)F1×F1]個々のインターバルマッピングを行った。マウス染色体3番上のマーカーであるD3Mit 141において,第三臼歯欠如の原因遺伝子との連鎖が強く示唆される値が得られたため,マウス染色体3番において詳細な連鎖解析を行った。この結果,ELマウスにおける第三臼歯欠如の原因遺伝子はD3 Mit 125からD3 Mit17にかけての領域,もしくはD3 Mit 141からD3 Mit 290にかけての領域に位置することが強く示唆された。
  • 高橋 摩理, 向井 美惠
    2002 年 40 巻 1 号 p. 64-76
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    摂食・嚥下機能療法の間接訓練と,筋機能療法で行われている代表的な指示運動について,口唇圧・頬圧と口唇動作の分析を行い,相互の関連性について検討を行った結果,以下の結論を得た。
    1.指示運動の種類により,口唇圧・頬圧,上唇点・口角外側点の運動軌跡長,上唇点・口角外側点のX・Y・Z軸の変位量,口唇幅径・高径変化率は異なる傾向を示した。
    2.口唇動作作用時間は,口唇圧・頬圧作用時間に比較し短かった。終了時間では,口唇圧より上唇動作,頬圧より口角動作の終了が早かった。
    3.口角牽引,口唇突出,頬を膨らませる,の指示運動では,口唇圧・頬圧と口唇動作との間の関連性は少なかった。
    4.頬をへこませる,リッププル,リップパッファー,の指示運動では,口唇圧・頬圧と口唇動作との問に有意な相関が認められた。
    今回の結果より,指示運動の種類により,口唇圧・頬圧,口唇動作に違いが認められ,指示運動を組み合わせて行う有用性が示唆された。また,指示運動を行うにあたっては,上唇,口角の観察が口唇の動きと強さを推察する上で重要であることが示された。
  • 岡崎 好秀, 平野 慶子, 東 知宏, 山本 誠二, 紀 瑩, 松村 誠士, 下野 勉, 金子 末子, 中村 弘之
    2002 年 40 巻 1 号 p. 77-83
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    1歳から5歳の乳歯列期の小児71名を対象として,齲蝕処置前後に齲蝕活動性試験Cariostat検査(CAT21テスト)を行い,齲蝕処置が判定結果におよぼす影響について調査した。
    1.処置前の1人平均d歯数は6.13,平均df歯数は7.68,CSIは18.4であり,処置後は,1人平均d歯数0,平均df歯数7.68,CSI9.73であった。
    2.処置前のCAT値は,25以上が最も多く35.2%,2.0が32.4%であった。また0.5以下はいなかった。
    3.処置後のCAT値は,1.0が29.6%で最も多く,次に1.5が26.8%であり,0.5以下は9.8%に増加した。
    4.処置前のCAT値が2.5以上の小児では,処置後88%のCAT値が低下し,2.0の小児では60.9%が低下した。
    5,処置前のCAT値とすべての齲蝕指数との間には,高度の相関関係が認められた(P<0.001)。しかし処置後では,相関関係がみられなかった。以上の結果,齲蝕処置によりCAT値が低下した小児が多くみられた。また処置後も定期健診を行うことにより,齲蝕活動性を低い状態に保つことが,二次齲蝕や新生齲蝕を予防すると考えられた。
  • 二木 昌人, 井上 美佐子, 柏木 伸一郎, 中田 稔
    2002 年 40 巻 1 号 p. 84-92
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    「親子で歯の健康教室」は,福岡市健康づくりセンターにおいて,福岡市に在住する就学前の小児とその保護者を対象として,歯科健診,歯科保健指導,フッ化物歯面塗布を行う事業であり,受講後のかかりつけ歯科医での継続管理を奨めている。本研究では受講者436名の実態を把握し,事業の評価と以後の方向性について検討した。
    受講者の平均年齢は2.15歳と低年齢で,第1子の割合が高かった。情報は保健福祉センター(保健所)の乳幼児歯科健診時の事業案内によって得た者が最も多かった。また,受講理由は大多数において「フッ素塗布」であり,フッ化物歯面塗布に対する一般の関心が高いことがうかがわれた。相談項目や実際の問診では歯磨きに関する相談が最も多く,低年齢児での歯磨き法や内容に関する指導や支援が重要であると考えられた。また,おやつの時間が決まっていない受講者が43.9%あり,乳幼児期の食事指導の必要性も高いと判断された。受講者の一人平均df歯数は福岡市乳幼児歯科健診の結果より低く,歯科保健に対する関心の高さや動機の強さがうかがわれた。しかしながら,低年齢ということもあり,フッ化物歯面塗布が初めてで歯科医院受診経験やかかりつけ歯科がない者が多くを占めていたため,本教室受講によって,かかりつけ歯科医を持つという行動変容が期待された。
    今後はこのような事業がより地域性を持って成功していくことで,かかりつけ歯科医によって齲蝕のみでなく口腔全体の健康管理が可能になると考えられる。
  • 萩原 智子
    2002 年 40 巻 1 号 p. 93-102
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    日本人における若年性顎関節症の増加が報告されているが,小児期における顎関節を構成する軟組織や骨性構成体の関与については解明がなされていない。一方,小児期の顎関節骨性構成体の計測に関する研究は散見されるが,資料採得の困難さから現代日本人小児の顎関節形態の三次元的な把握は十分になされていない。本研究の目的は,すでに撮像が施されているCT像を用いて小児期における下顎窩の三次元的な形態変化を検討することである。研究資料は,患児,36症例72関節(男児:18名,女児:18名,7歳~12歳)より得られたCTデータとした。FH平面を基準にCT三次元再構築像を作成し,設定した計測点をもとに下顎窩の1.水平的位置変化,2.垂直的変化,3.前後的変化,4.左右的変化,5.角度変化の各項目について計測した。
    Spearmanの相関係数および回帰直線を算出し,年齢との関連を検討した(危険率5%以下有意)。その結果,年齢と下顎窩の水平的位置変化,垂直的変化,左右的変化および角度変化より得た項目間に有意な相関係数を認めた。しかし,年齢と下顎窩の前後的変化より得た項目間に有意な相関係数は認めなかった。また,年齢から下顎窩の水平的位置変化,左右的変化および角度変化より得た項目では回帰直線が得られたが,垂直的変化の項目では回帰直線が得られなかった。以上の結果より,小児期の下顎窩の形態変化は三次元的に多様であることが示唆された。
  • 鈴木 康秀, 飯沼 光生, 安井 清子, 高田 真希, 峯田 淑江, 田村 康夫
    2002 年 40 巻 1 号 p. 103-113
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    生存期間が約1年と短く,早期に老化徴候を示す老化促進マウス(SAM PlTa以下SAM Plマウスと略す)を用い,歯の長期間の喪失が全身,特に老化に及ぼす影響を検討した。
    実験方法としては,SAM Plマウス80匹を生後5週で,上下顎左右臼歯,上顎左右臼歯,下顎左右臼歯を抜歯し,飼育した。これらのマウスの測定項目は,体重,飼料摂取量,老化度指数,自発運動量であり,自然死するまで飼育した。また生後24週の舌へのアミロイド蛋白の沈着も観察した。
    体重,飼料摂取量には各群間に差は認められなかった。一方,20週以降になると,抜歯した3群はコントロール群に比べ老化度指数が高く,自発運動量も少なく,早期に老化が進行していることが明らかになった。アミロイド沈着については,抜歯群では既に24週で乳頭直下にアミロイドが沈着しており,生体内でも既に老化が進行していた。死亡時期についても,コントロール群と比較して,抜歯群が早かった。しかし,抜歯部位による差は認められなかった。
    以上のことより,歯が長期にわたって喪失することにより老化が早期に進行し,寿命が短くなることが示唆された。
  • 飯島 英世, 三浦 誠子, 青木 明子, 三輪 全三, 高木 裕三
    2002 年 40 巻 1 号 p. 114-118
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯列期小児における習慣性咀嚼側について,その存在と,成長発達による変化を明らかにするために,Hellmanの歯年齢IIA期幼児(3歳4か月~5歳11か月)46名(男児19名女児27名)を対象とし,小児用下顎運動測定装置を使用して,咀嚼ゼリーを咀嚼させた時の前頭面での下顎運動を記録し,習慣性咀嚼側について検討したところ,以下のような所見を得た。
    1.習慣性咀嚼側の側性は右70.4%左29.6%で,習慣性咀嚼側が右の幼児が多かった。
    2.習慣性咀嚼側の成長発達による変化では,3歳児ではその側性が不明瞭な者が多かったが4歳児,5歳児になるに従って次第に明瞭になり,5歳児後半ではかなり明瞭になることが判明した。
  • 福島 理恵
    2002 年 40 巻 1 号 p. 119-131
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    嚥下に至るまでの生理的な咀嚼運動を解明する目的で,個々の被験者の一口咀嚼量,一口咀嚼時間を測定した。その一口量咀嚼時間を3等分し(1/3,2/3,3/3咀嚼時間),咀嚼開始から嚥下へと至る食塊の経時的な変化を,水分量,食塊物性,粉砕率,筋活動量(咬筋,顎舌骨筋)の面から分析を行い検討した。咀嚼試料として魚肉ソーセージ,米飯を用いた。
    一口量,一口量咀嚼時間は同一食品の場合,各被験者とも変化が少なく,規則性が認められた。粉砕率は経時的に増加していたが,増加の度合いには個人差が認められた。それは顎舌骨筋の働きと相関しており粉砕率は顎舌骨筋の働きで増加すると考えられた。水分量は経時的に一定の割合で増加し,嚥下時における水分量は同一試料では各被験者とも一定の値を示した。物性は硬さ,付着性,ガム性が咀嚼2/3時点までに大きく変化し,それ以降の変化は少なかった。また,咀嚼試料が異なっても嚥下時の食塊物性はほぼ一定であった。
    以上の結果から,食塊物性の変化には粉砕率,水分量の変化が影響し,これらの統合が物性として表現されていることが示唆され,咀嚼とは一定の水分量,一定の粉砕率を得ることを目標に,最終的に嚥下に適した物性を有する食塊を形成することと考えられた。したがって,食塊物性の変化を調べることは咀嚼の進行を把握する上で重要であることが示唆された。
  • 二木 昌人, 井上 美佐子, 岩男 好恵, 柏木 伸一郎, 中田 稔
    2002 年 40 巻 1 号 p. 132-139
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    「親子で歯の健康教室」は,福岡市健康づくりセンターにおいて,福岡市に在住する就学前の小児とその保護者を対象として,歯科健診,歯科相談および歯科保健指導,フッ化物歯面塗布を行っている事業であり,受講後のかかりつけ歯科医での継続管理を奨めている。第1報の実態調査では,受講者の歯科的バックグラウンドを中心に実態が明らかになり,受講者の年齢や受講目的,相談の内容などの情報も得られたことで,現在行っている事業内容の再評価ができ,今後の方針についてより明確化された。本報告では1007名の受講保護者に対して,受講後の歯科保健行動の変容を調べる目的でアンケート調査を行い,得られた348件の回答を集計した。
    その結果,歯磨きの習慣化,食生活に関する配慮などのホームケアに関する項目の改善がみられた。また受講後は,フッ化物歯面塗布,定期健診,シーラントなどの目的で受講者の78.7%が歯科医院を受診しており,ほとんどは受講後6か月以内に受診していた。受診者のうち64.2%が小児歯科専門を受診しているが,処置・指導内容においては,一般・小児歯科標榜より小児歯科専門の方が定期健診の継続率が高いことを始めとして,より複数の方法を用いた積極的な齲蝕予防が計画されていることがうかがわれた。また,受講によって保護者自身の歯科保健行動にも改善がみられており,本事業での歯科保健教育が効果的で,かかりつけ歯科医院受診の窓口になっていることが明らかになった。
  • 岡崎 好秀, 東 知宏, 村上 知, 岡本 安広, 山岡 瑞佳, Bazar Oyuntsetseg, 松村 誠士, 下野 勉
    2002 年 40 巻 1 号 p. 140-147
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    幼稚園年長児(5・6歳児)173名を対象として,カリオスタットテスト(CAT21テスト)と唾液緩衝能テスト(CAT21Bufテスト)を行い,齲蝕罹患状態との関係について調査した。さらに,両試験法を組み合わせた場合の関係についても検討し,以下の結論を得た。
    1.対象者の齲蝕罹患者率は64.2%,一人平均df歯数は3.69歯であった。
    2.CAT21テストとCAT21 Bufテストは,df歯数との間に正の相関関係が認められた(P<0.05)。
    3.CAT21テストとCAT21 Bufテストとの間には,相関関係がみられなかった。
    4.CAT21テストの結果を低リスク群(1.5以下)と高リスク群(2.0以上)に分けたところ,一人平均df歯数には有意な差が認められた(ANOVA p<0.001)。
    5.CAT21 Bufテストの結果を低リスク群(高緩衝能群,中緩衝能群)と高リスク群(低緩衝能群)に分けたところ,一人平均df歯数には有意な差が認められた(ANOVA p<0.05)。
    6.CAT21テストとCAT21 Bufテストの結果を組み合わせたところ,それぞれの判定結果が悪くなるほどdf歯数も増加した(ANOVA p<0.01)。
    以上のことから,幼稚園児において齲蝕活動性試験を単独で行うより,両者を組み合わせた方が,効果的に齲蝕罹患状態を把握することが可能であった。
  • 今村 治代, 辻野 啓一郎, 望月 清志, 大多和 由美, 藥師寺 仁
    2002 年 40 巻 1 号 p. 148-154
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    わが国は近年急速に少子高齢社会に変化している。その中で今後の小児歯科の役割は重要性を増し,少子時代故にていると思われる。また,定住人口の減少が進んでいる都心部では地域医療需要にも変化が生じており,小児歯科医療を取りまく環境には変化が生じていると思われる。そこで今回,この点を明らかにする目的で,平成8年4月から平成11年3月までの3年間に東京歯科大学水道橋病院小児歯科に初診で来院した患児870名について,来院時年齢,来院動機,居住地域,紹介状の有無について調査を行うとともに,過去に当講座で実施した同様の調査と比較・検討を行った。
    その結果,年齢別にみた初診患児の割合は幼児および児童がそれぞれほぼ40%を占めており学校ある,残りは中いは高等学校の生徒であった.齲蝕治療を来院動機とする患児は減少傾向にあり牙外傷,低年齢児では歯来院永久歯萌出開始期以降からは,歯列異常や萌出異常に関する訴えが増加していた。紹介状を持ってした患児では,歯数異常や萌出異常,軟組織異常が多くみられた。以上の結果から,歯科大学病院小児歯科の役割として,低年齢児の歯牙外傷に対する管理,歯列異常,萌出異常や歯数異常を有する患児に対する咬合誘導処置,あるいは一般歯科診療所からの歯科的管理の依頼に対し,適切に対応することが求められているものと思われた。
  • 鈴木 崇之, 蓜島 弘之, 向井 美惠, 五十嵐 清治
    2002 年 40 巻 1 号 p. 155-165
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,臨床的評価への応用を前提として,顎口腔機能に異常を認めない成人を対象に異なる舌尖の位置を規定し,嚥下時の舌背面陥凹の程度と舌骨上筋群と咬筋の筋活動量を比較検討することにより,舌尖の位置が嚥下時舌運動に及ぼす影響について検討することを目的とした。得られた結果は以下の通りである。
    1.舌背中央部の陥凹深度および陥凹幅径の計測から,舌尖の前方変位に伴って,舌の陥凹形成が浅く,かつ広くなる傾向が明らかになった。
    2.舌を前方に突出させるに伴い,舌骨上筋群の筋活動量が増加する傾向が認められた。
    3.咬筋の筋活動量は舌を前方に突出させても大きな変化は見られなかったが,個人内変動が大きくなった。
    4.舌尖が正常時のときは咬筋のpeak出現後平均約100msec後に舌骨上筋群のpeakが出現したが,舌尖を上唇赤唇移行部に突出させると両筋のpeak時間の差が約20msecとなり,有意に減少していた。
    5.超音波診断装置と筋電図の同時記録より,舌の前方突出に伴っても舌と口蓋の接触時点と舌骨上筋群筋活動のpeak時点との時間差のずれはみられなかった。しかし,舌動態と筋活動のpeakの時間差のばらつきがみられ,安定していなかった。以上の結果より,舌を前方突出させると,通常時には認められない嚥下時舌運動および筋活動様相を生じることが示唆された。
  • 山本 誠二, 壺内 智郎, 仲井 雪絵, 中藤 尚子, 松村 誠士, 下野 勉
    2002 年 40 巻 1 号 p. 166-170
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    今回,著者らは歯内歯が原因と考えられるオトガイ部に発生した外歯瘻の一例に遭遇したので報告する。
    患児は,初診時年齢8歳11か月でオトガイ部腫瘤を主訴に当科を受診した。顔貌所見より,オトガイ部に腫瘤が認められた。口腔内診査およびエックス線所見より,右側下顎中切歯に齲蝕等は認められないが根尖部に病巣らしきエックス線透過像が認められた。また,同歯は歯内歯と思われるエックス線所見が得られた。臨床所見より,歯内歯に起因した外歯瘻との診断のもと,感染根管治療を施し,経過観察を行った。初診より約2年後にオトガイ部の外歯瘻および右側下顎中切歯根尖部の病巣は消失しており,経過良好である。
  • 菅野 亜里早, 清水 邦彦, 新井 嘉則, 篠田 宏司, 前田 隆秀
    2002 年 40 巻 1 号 p. 171-176
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    上顎左側側切歯歯部の自発痛を主訴として来院した10歳10か月の女児において,エックス線写真の所見から上顎左側側切歯の陥入歯を認め,この陥入歯が根尖性歯周炎を惹起したと考えられる1例を経験した。
    患児は38.0℃ の発熱と左側鼻翼部を中心に顔面腫脹を認めるとともに上顎左側側切歯部の拍動痛を認めた。血液検査より白血球数が12×103lであった。エックス線写真より上顎左側側切歯に陥入歯様の不透過像を認め,さらに根尖部には歯根膜腔の拡大及び骨のびまん性吸収を認めたために上顎左側側切歯部の根尖性歯周炎と診断した。治療に先立ち,複雑な陥入歯の形態を詳細に把握するために3DX®(モリタ製作所)にて診査を行った結果,陥入歯は上顎左側側切歯の根尖付近まで認められ長さは歯冠頂より19mm(上顎左側側切歯根長は21mm)であった。陥入歯の根尖は近心側に向いており側切歯の根尖とは一致していない。3DX®より得られた情報をもとに陥入歯に歯内療法を行った。その際,陥入歯の根管からは排膿を認めたが,陥入歯周囲に存在する歯髄には生活反応が認められたために,陥入歯のみに根管拡大およびガッタパーチャポイントによる根管充填を行った。治療後の経過観察において臨床症状は緩解しており,さらに電気歯髄診断によって上顎左側側切歯の生活反応が確認された。陥入歯の複雑な根管形態の診査が3DX®により可能になり,治療に有用であった。
  • 石谷 徳人, 重田 浩樹, 長谷川 大子, 小椋 正
    2002 年 40 巻 1 号 p. 177-182
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    右側顎関節部と右側咬筋部の運動時痛を主訴として来院した初診時年齢12歳11か月の女児に対し,スプリント療法を行った。当初は右側顎関節部の疼痛は軽減するも,6か月後に左側にも復位を伴わない関節円板の前方転位を示し,左側顎関節部の雑音,同部の疼痛が発現した。さらに,理学療法を併用し,一時的な効果を認めていたが,18歳2か月時より,これまで行ってきた保存的治療での効果が認められなくなり,両側顎関節部の雑音と同部の疼痛が継続するようになった。顎関節症症状の原因として,下顎頭による円板後部結合組織への過剰な負荷が考えられた。
    そこで下顎頭を前下方へ移動させて円板後部結合組織にかかる負荷を軽減させることが症状の改善につながると考え,治療方針の再検討を行い,前方整位型スプリントを装着することにした。その結果,雑音が消失し,さらに運動時痛や圧痛の消失が認められたため,装着を継続して顎関節症症状の経過を観察した。その後の経過も良好なため,その下顎位を基準にして咬合治療を行うことにした。本症例では,歯の挺出により,中心咬合位を形成した。咬合治療後6か月において経過は良好であり,症例によっては,咬合治療はより有効な治療法の1つになり得ることが示唆された。
  • 福島 理恵, 高森 一乗, 小野 義晃, 巣瀬 賢一, 時安 喜彦, 渡部 茂
    2002 年 40 巻 1 号 p. 183-188
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    今回我々は,流涎と咀嚼機能障害を主訴に来院した患児(5歳1か月,男児)に対し患児の咀嚼機能を詳細に把握する目的で発達検査,口腔摂食機能検査,唾液分泌速度の測定,口唇圧検査,咀嚼筋活動量の検査,デンタルプレスケール®による検査(咬合接触面積,咬合力,平均咬合圧,最大咬合圧),咀嚼能率(篩分法)の測定を行った。
    安静時ならびに刺激時唾液分泌速度は基準値の範囲内であった。口唇圧は基準値と比べ大きかった。一方,咬合接触面積,咬合力,平均咬合圧,最大咬合圧,咀嚼サイクル,咀嚼能率は基準値より低かった。咀嚼時間は延長し筋活動量は基準値以上を示した。これらのことから患児は食塊形成能力が低く,食塊が嚥下閾の物性に至らないために嚥下の誘発がおこりにくい状態が続いていることが考えられた。流涎については咀嚼機能の低下によるものと思われた。これらの咀嚼機能の低下と流涎となった背景には,副鼻腔炎による口唇閉鎖不全が大きく影響していることが考えられた。
    以上の結果より,今回患児に対して行った検査は咀嚼機能を客観的に評価し,咀嚼の問題点を明確にするとともに,咀嚼機能訓練後の機能再評価の基準となる可能性が示唆された。
  • 周 静, 小林 博昭, 神成 直子, 田口 洋, 朝日藤 寿一, 野田 忠
    2002 年 40 巻 1 号 p. 189-197
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    第二大臼歯の萌出障害は比較的稀であるが,患児は13歳10か月時,上下顎左右側第二大臼歯部の4か所に嚢胞様病変を認め,そのうち3歯の第二大臼歯に萌出遅延を生じていた。特に下顎左側第二大臼歯はほぼ水平に近心傾斜し,歯冠は嚢胞腔内に含まれる形で埋伏していた。水平埋伏した下顎第二大臼歯は抜歯となることが多いが,本症例では,下顎左側第二大臼歯部の嚢胞に対して開窓を行い,嚢胞治癒後に同歯の萌出誘導を行って,歯列上に配列することができた。すでに萌出していた下顎右側第二大臼歯の嚢胞様病変についても,開窓を行い良好な結果を得た。上顎両側第二大臼歯は未萌出であり,歯冠周囲の歯小嚢の拡大像がみられた。上顎右側第二大臼歯は14歳9か月時に自然萌出したが,左側第二大臼歯はびまん性の腫脹が生じたため,16歳1か月時に開窓を行い,歯列内に配列させることができた。
    下顎左側第二大臼歯の萌出障害の直接的原因としては,嚢胞または歯胚の萌出方向の異常が考えられた。本症例は,類似した嚢胞様病変が上下顎の4か所に生じたが,多発嚢胞を生じた原因は明らかではない。多発嚢胞は基底細胞母斑症候群に多く発症するといわれているが,本症例では同症候群との関連はないと考えられた。しかし,基底細胞母斑が出現するのは思春期以降から35歳ごろであるといわれており,今後も経過観察を行う必要があると思われた。
  • 辻野 啓一郎, 望月 清志, 大多和 由美, 藥師寺 仁, 井上 孝
    2002 年 40 巻 1 号 p. 198-203
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    エプーリスは歯齦部にみられる良性の限局性腫瘤を総括した臨床名として用いられ,組織学的に多様な構造を呈している。その組織型により数型に分類されるが,骨形成を伴うものは比較的稀である。また,10歳以下の小児では少ないとされ,乳歯に由来する症例も少ないとされている。今回著者らは,7歳男児および9歳男児にみられた線維性骨形成性エプーリスの2例を経験した。
    症例1は,7歳8か月の男児で上顎左側第二乳臼歯部の腫脹を主訴に来院した。症例2は,9歳3か月の男児で上顎右側乳側切歯脱落後,当該部に腫瘤が増殖したことを主訴に来院した。
    両例ともエプーリスの臨床診断のもとに,腫瘤を外科的に切除した。病理組織検査の結果,いずれも腫瘤内に幼若な骨組織の形成がみられ,病理組織診断は線維性骨形成性エプーリスであった。
    これら2例とも処置後再発は認めず,後継永久歯の萌出も順調である。
  • 2002 年 40 巻 1 号 p. 204-244
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
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