小児歯科学雑誌
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乳臼歯の小窩裂溝齲蝕の診断
DIAGNOdentTMによる蛍光測定と病理組織学的な確定診断
割田 幸恵荻原 和彦青葉 孝昭
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2002 年 40 巻 3 号 p. 454-467

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抄録

本研究では,乳臼歯咬合面小窩裂溝での初期齲蝕の診断法の向上を長期的目標として,肉眼的に齲窩をともなわない抜去歯32本を対象として,同一箇所での視診・DIAGNOdentTMによる蛍光測定・組織確定診断を行った。DIAGNOdentTMによる蛍光測定は歯面の乾燥・湿潤状態によって大きく影響され,蛍光強度は湿潤時に減弱する傾向が認められた。また,乾燥状態での蛍光測定で再現性の高い結果が得られたことから,乾燥歯面での測定値を臨床蛍光スコアとした。観察対象の乳臼歯咬合面をシーラント填塞などの歯面処置の有無に基づき,未充填群(n=68)と充填群(n=29)とに大別した。各診断部位において,視診と組織診断による判定内容についてはスコア表示を実施し,臨床蛍光スコアと対比した。未充填群と充填群のいずれにおいても,視診スコアと臨床蛍光スコアとの間には相関は認められなかったが,組織スコアと臨床蛍光スコアとの間には相関が認められた。ただし,組織確定診断に基づく判定結果では,DIAGNOdentTMによる蛍光測定はエナメル質の状態(実質欠損の有無,色調,歯質厚さ)に依存しており,潜在する象牙質齲蝕の検知やその侵襲範囲の同定には困難を残すことが示唆された。これらの改善すべき課題は残すものの,視診の精度向上と蛍光測定法との併用は,小児歯科臨床での初期齲蝕の診断・予後判定・管理にとって有用と考えられる。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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