抄録
齲蝕活動性試験で小児の齲蝕罹患状況を評価するために,ミューカウント®を用いてその活動性と齲蝕病原細菌の付着性の検討を行った。またミューカウント®から分離したStreptococcus mutans(S. mutans)株について,酵素処理DNAの電気泳動パターンを比較し,さらに齲蝕罹患状況別に分類したS. mutans株のグルコシルトランスフェラーゼ(GTF)の水溶性および非水溶性多糖体合成量,抗GTF-I特異マウス単クローン抗体を用いたGTF-I量を検討し,以下の結論を得た。
1.ミューカウント管壁付着菌のうちS. mutansと同定される菌は全分離株の約3分の1であった。
2.ミューカウントスコアとdf+DF歯数との問では乳歯列期にのみ正の相関が認められた。
3.分離S. mutans株の酵素処理DNAの電気泳動パターンは,一口腔内から分離されたS. mutans株間では同一のDNA電気泳動パターンを示し,個体問では6.56kbp以上の電気泳動パターンに差異を認めた。
4.df+DF歯数0の被験児由来S. mutans株の多糖体合成量およびGTF-I量は,df+DF歯数8以上の被験児のそれよりも有意に低いことが明らかとなった。
5.低GTF菌から高GTF菌へのスクロースによる誘導は認められなかった。以上より,ミューカウントスコアによる判定だけでは,小児の齲蝕状況を評価することは困難であり,齲蝕予防をより効果的に行うためには個々の口腔内棲息S. mutansの性状を検討する必要性のあることが示唆された。