抄録
本研究の目的は,エナメル質初期齲蝕病変の再石灰化に及ぼすフッ化物,カルシウムおよびキシリトールの効果を確認することである.フッ化ナトリウム,乳酸カルシウム,キシリトールを種々の濃度含有する水溶液を用いて,イオンの挙動解析,エナメル質へのフッ素取り込み試験やpH-cycling処置によるエナメル質初期齲蝕の再石灰化試験を行い,以下の所見が得られた.
1.フッ素イオン水溶液へのカルシウムイオン水溶液の添加実験から,キシリトール含有の有無にかかわらず,当量点 F:Ca=2:1まで定量的にフッ化カルシウムを生成することが認められた.
2.フッ化ナトリウム+キシリトール+カルシウム群は,フッ化ナトリウム単独群およびフッ化ナトリウム+キシリトール群に比較して有意に高いフッ素沈着が認められた.
3.フッ化ナトリウム+キシリトール+カルシウム群は,フッ化ナトリウム単独群およびフッ化ナトリウム+キシリトール群に比較して有意な再石灰化が認められた.
4.フッ化ナトリウム+キシリトール群はフッ化ナトリウム単独群よりも高い再石灰化率を示したが有意差は認められず,キシリトール含有量の違いによる影響も認められなかった.