小児歯科学雑誌
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若年者における上顎右側中切歯欠如を伴う叢生歯列の1治験例
倉元 郁代岩崎 智憲山崎 要一
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2003 年 41 巻 4 号 p. 766-774

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抄録

本症例は初診時年齢7歳10か月の男子で,上顎右側中切歯の欠如と下顎切歯の叢生を認め,近医からの紹介状をもって当科を受診した.動的治療開始まで齲蝕予防を中心に経過観察を行ってきた.動的治療開始年齢15歳3か月で,上顎右側中切歯欠如による上顎歯列の正中の右偏,下顎歯列叢生,上下顎切歯の唇側傾斜を伴う片側性AngleII級,骨格性I級のローアングルを呈していた.上顎左側第一小臼歯と下顎両側第一小臼歯の抜去後,プリアジャステットエッジワイズ装置の1つであるSPEED applianceを用いて動的治療を行った.
この症例で目標とした特異な前歯部排列〓〓〓は,
1.上顎右側側切歯を中切歯欠如部に移動させて歯冠の形態修正および歯根の平行化,
2.上顎右側犬歯を側切歯部に移動させて形態修正しパラタル・ルート・トルクの付与,
3.上顎右側第一小臼歯を犬歯部に移動させてバッカル・ルート・トルクの付与,が必要であった.そのため,ブラケットにて歯の位置や傾斜の細かな調整を行うとともに,上顎右側中切歯部に排列された側切歯の歯肉切除も行った.
3年1か月の動的治療の結果,適切なoverbiteとoverjet,大臼歯のI級関係が獲得された.咬合様式はグループファンクションで,1年後の現在も安定した咬合状態が維持されている.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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