小児歯科学雑誌
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吸啜期ラットの摂食調節中枢におけるニューロペプチドYの発現変化
阿部 倫子白川 哲夫小口 春久
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2003 年 41 巻 5 号 p. 830-842

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抄録

ニューロペプチドY(NPY)は摂食亢進ペプチドであり,弓状核は視床下部での主要なNPY合成部位である。成熟ラットの弓状核のNPY mRNAは絶食により増加し,再摂食により平常レベルに戻る。しかしながら,吸啜期の脳内のNPYと摂食行動との関連については不明な点が多い。今回,吸啜期ラットの視床下部および脳幹におけるNPY mRNA発現を,自由摂食および絶食条件下でin situハイブリダイゼーション法により検討した。
生後2,7,10日(P2,7,10)の新生ラットを3群に分類した。「自由摂食群」は常に母ラットとともに飼育し,「絶食群」は母ラットから分離し絶食としたのち脳を摘出し,「絶食後摂食群」は絶食後母ラットに哺乳させたのち脳を摘出した。絶食群の弓状核でのNPY mRNA発現量は,いずれの日齢においても自由摂食群より多かった。また,絶食後摂食群では,自由摂食群と絶食群の中間の発現レベルを示した。孤束核のNPY mRNA発現量はP2では絶食群で増加していたが,P7および10では変化は認められなかった。
以上の結果より,吸啜期でも絶食により弓状核のNPY mRNAの発現が増加し,摂食後に減少すること,また孤束核では,P2の絶食時にNPY mRNA発現が増加することが示された。NPYを介する摂食調節に,P2では弓状核および孤束核の両者が関与し,P7以降では弓状核がより主要な働きをしている可能性が示唆された。

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