抄録
ヒトβディフェンシンは種々な組織で発現している抗菌タンパクで,近年口腔粘膜および唾液腺での発現も確認されており,口腔内細菌に対する感染防御機構のひとつとして認識されてきている。本研究は,外科的処置で得られた小児歯肉を用い,代表的なヒトβディフェンシン,タイプ1(hBD-1),タイプ2(hBD-2)そしてタイプ3(hBD-3)mRNAそれぞれの局在および発現量を比較検討した。
in situhybridizationによるhBD-1,hBD-2およびhBD-3mRNA局在の検索では,全てのβディフェンシンmRNAが,歯肉重層扁平上皮の棘細胞層上層から顆粒細胞層に局在していた。LightCyclerTMを用いた定量的PCR法(Real-timePCR)によるhBD-1,hBD-2およびhBD-3mRNA発現量の比較では,全てのサンプルに発現が認められたが,それぞれに有意差は認められなかった。
以上の結果より,小児歯肉,重層扁平上皮におけるhBD-1,hBD-2そしてhBD-3mRNAの局在および発現量は類似しており,同様の機能もしくはそれぞれを補う役割を担っていることが示唆された。