小児歯科学雑誌
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マウス舌初期発生での筋系譜細胞の移住現象と表現型の推移
藤武 貴尚田谷 雄二内川 喜盛青葉 孝昭
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2005 年 43 巻 3 号 p. 408-416

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抄録

マウス舌筋原基を構成する筋系譜細胞は空間的に離れた後頭体節から移住してくる.本研究では,筋特異的分子マーカ(Desmin,MyoD)の免疫組織化学により,マウス舌筋の初期発生にみられる後頭体節から舌予定領域までの筋系譜細胞の移住経路について検討した.
後頭体節から下顎突起へ移住する筋前駆細胞は,Desmin陽性/MyoD陰性で仮足形成を特徴とした.筋前駆細胞は胎生9.8日において背側側方の後頭体節から鰓弓に向かって遊走を始めており,体幹問充織から第3,4鰓弓動脈の腹側を経由して第2鰓弓正中側に達し,胎生10.3日にはDesmin陽性/MyoD陰性の表現型を保ったまま下顎突起の正中部に到達した.下顎突起に到達した筋前駆細胞は,増殖活性を維持しながら多角形に細胞形態を変化させ,細胞突起によって相互に連結した細胞集団を構成していた.胎生11.4日前後で外側舌隆起が形成されるが,この時期に一致して下顎突起内では筋前駆細胞からDesmin陽性/MyoD陽性の筋芽細胞への分化が認められた.舌の形態形成が進んだ胎生12.3日では,舌予定領域内に筋前駆細胞と筋芽細胞とが混在して分布しており,増殖活性を停止した筋芽細胞は筋管形成に向けて紡錘形に形態変化を遂げていた.
今回の組織観察で明らかにされた筋系譜細胞の移住と表現型について,現在,その分子制御機構の解明を進めている.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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