小児歯科学雑誌
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43 巻, 3 号
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  • 大島 昇平
    2005 年 43 巻 3 号 p. 375-379
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
  • 福本 敏
    2005 年 43 巻 3 号 p. 380-384
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯の再生は歯科医学研究者の永遠のテーマであるが,現状ではエナメル質,象牙質,セメント質の3つの硬組織を有し,かつ適切な形態を維持した歯の再生はまだ行われていない.我々はエナメル質形成に必須の分子であると考えられているエナメルマトリックスに着目し,その分子メカニズムの解明を試みた.その結果,エナメルマトリックスの一つであるアメロブラスチンは,エナメルマトリックスを分泌するエナメル芽細胞の分化の制御および維持に重要な役割を演じていることが明らかとなった.具体的には,アメロブラスチンは,エナメル芽細胞の細胞極性の維持,細胞増殖の停止に関与し,アメロジェニンの分泌を誘導すること,さらにこれらの分化制御はエナメル芽細胞の分泌期に生じる基底膜の消失とともにおこなわれることが明らかとなった.また本分子を欠損したマウスでは,人の遺伝性エナメル質形成不全症に類似した表現系を示し,エナメル質をほとんど欠損してしまうこと.しかしながら象牙質の形成には何ら影響を及ぼさないこと,さらに加齢に伴って顎骨内に歯原性腫瘍を生じることが明らかとなった.以上の結果から,アメロブラスチンが,エナメル質形成不全症の原因遺伝子の可能性,さらには口腔腫瘍の抑制分子として重要な機能を有していることが示唆された.
  • 三留 雅人
    2005 年 43 巻 3 号 p. 385-388
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
  • 小林 千里, 福島 伸一, 田口 洋, 野田 忠
    2005 年 43 巻 3 号 p. 389-399
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らは,復元学校給食を用いて,主食の違いが咀嚼に与える影響について検討を行ってきた.本研究では,給食の副食のみを変え,3種類の硬さの異なる食品にすることで,咀嚼とそれに関連する摂食がどのような影響を受けるかについて実験を行った.また,食品の違いが咀嚼に与える影響を明確にするために,各食品を単品で摂取した際の変化についても検討した.
    その結果,副食の硬さを変化させても,それぞれの給食を食べ終えるまでの咀嚼時間や咀嚼回数には大きな違いを認めなかった.各食品を単品で摂取した場合にも,それぞれの食品間で,一口あたりの咀嚼時間や咀嚼回数に違いは認められなかった.一方,一口あたりの摂取量では,最もやわらかいコロッケが最も多いという結果が得られた.
    以上より,摂取する食品の物性が変わっても,一口あたりの咀嚼回数や咀嚼時間は一定となるように,認知期での高次脳機瀧によって一口量は調節されていることが考えられた.このような一口量の調節は,個人の摂食能力や食経験に応じて獲得されていくものであろうと推察される.したがって,食経験の浅い小児では,一口量の判別能力が成長発育に応じて無理なく獲得できる食環境を整える必要があると思われた.
  • 臨床的および構造力学的考察について
    嘉藤 幹夫, 園本 美惠, 小川 大樹, 堀田 博史, 渡邉 記代, 原田 竜, 大東 道治
    2005 年 43 巻 3 号 p. 400-407
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    幼若永久切歯が外傷により陥入した症例の根尖部の処置について検討するために,臨床的な処置方法および有限要素法を用いた構造力学的解析を行った.その結果,
    1.軽度の陥入例で,根尖部への影響が少ない場合は,歯根形成が継続してくるので経過観察して根尖の閉鎖を待ち,とくに処置は必要ないと考えられる.
    2.中等度や重度の陥入例では,動揺が著しいので整復処置を施し,歯根が短縮して根尖部の変形ならびに圧縮のため歯根形成停止や歯髄壊死が生じた場合は,アペキシフィケーション法にて根尖の閉鎖を促進することが必要と考えられる.
    また,根尖の閉鎖後にも歯根吸収や歯根破折が生じることがあるので,長期間の経過観察を行うことが必要であると示唆された.
  • 藤武 貴尚, 田谷 雄二, 内川 喜盛, 青葉 孝昭
    2005 年 43 巻 3 号 p. 408-416
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    マウス舌筋原基を構成する筋系譜細胞は空間的に離れた後頭体節から移住してくる.本研究では,筋特異的分子マーカ(Desmin,MyoD)の免疫組織化学により,マウス舌筋の初期発生にみられる後頭体節から舌予定領域までの筋系譜細胞の移住経路について検討した.
    後頭体節から下顎突起へ移住する筋前駆細胞は,Desmin陽性/MyoD陰性で仮足形成を特徴とした.筋前駆細胞は胎生9.8日において背側側方の後頭体節から鰓弓に向かって遊走を始めており,体幹問充織から第3,4鰓弓動脈の腹側を経由して第2鰓弓正中側に達し,胎生10.3日にはDesmin陽性/MyoD陰性の表現型を保ったまま下顎突起の正中部に到達した.下顎突起に到達した筋前駆細胞は,増殖活性を維持しながら多角形に細胞形態を変化させ,細胞突起によって相互に連結した細胞集団を構成していた.胎生11.4日前後で外側舌隆起が形成されるが,この時期に一致して下顎突起内では筋前駆細胞からDesmin陽性/MyoD陽性の筋芽細胞への分化が認められた.舌の形態形成が進んだ胎生12.3日では,舌予定領域内に筋前駆細胞と筋芽細胞とが混在して分布しており,増殖活性を停止した筋芽細胞は筋管形成に向けて紡錘形に形態変化を遂げていた.
    今回の組織観察で明らかにされた筋系譜細胞の移住と表現型について,現在,その分子制御機構の解明を進めている.
  • 芳野 素子, 荻原 勝, 遠藤 敏哉, 小林 義樹, 下岡 正八
    2005 年 43 巻 3 号 p. 417-424
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    日本歯科大学新潟歯学部では,平成15年4月の大学機構改革により,講座と診療科別専任の二元化を導入した.これに伴い従来の小児歯科学と歯科矯正学を一つにまとめ,顎顔面口腔形態機能育成学として新しい歯科医学教育改革に対応している.さらに,小児歯科と矯正歯科は統合され,一診療科として知識,技能および態度の共有を図っている.歯科大学・歯学部附属病院は,歯科医療の変化に対応した診療体制を構築する必要がある.
    そこで,小児・矯正歯科に来院した矯正患者を対象として,診療日時に関するアンケートを実施し,以下の結論を得た.
    1.来院動機は,平日,土曜日とも患者の休みが大きく関与していた.
    2.平日来院患者の来院曜日,予約曜日はそれぞれ火曜日,水曜日が最も多かった.土曜日来院患者は,土曜日以外に日曜日を希望した.
    3.患者が最も多い来院時間と予約時間は,平日が16時から16時59分まで,土曜日が14時から14時59分までであった.患者が最も多い来院時間帯と予約時問帯は平日が夕方,土曜日が午前であった.
    4.耐えられる待ち時間,診療時間は,それぞれ15分から30分未満,30分から1時間未満が最も多かった.本学附属病院の来院曜日および来院時間は患者の希望に必ずしも即しているものではなかった.診療時間は一概に短縮するのではなく,患者の満足度に対応する必要があると示唆された.
  • 木村 奈津子, 有田 憲司, 山内 理恵, 西野 瑞穗
    2005 年 43 巻 3 号 p. 425-432
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    新しく開発された急速転換型CPCは,硬化時pH値が上昇するが,硬化後HApに転換し中性となる特徴を有する.本研究の目的は,急速転換型CPCの生活歯髄切断法への応用の可能性を検討することであり,本材の硬化時pH値の変化が生体組織のpH値を変化させ得るか否かについて検索した.被験試料として,Ca/P比の異なる2種の急速転換型CPC(Ca/P比1.7と2.0)を試作し,従来型CPCのα-TCPおよびCa(OH)2を対照群として用いた.方法は,被験試料を作用させたラットの皮下結合組織表面のpH(組織pH)値の経時的変化と被験試料自体のpH(試料pH)値の経時的変化とを比較した.
    その結果,
    1.α-TCPは試料pH値,組織pH値ともに中性を示した.また,Ca(OH)2の試料pH値,組織pH値ともに強アルカリ性を示した.
    2.両急速転換型CPCの試料pH値は,硬化初期は13以上の値を示したが,1日後には8.4-8.9に低下した.
    3.両急速転換型CPCの組織pH値は,硬化初期は11.2-12.3を示し,Ca(OH)2の組織pH値との間に有意差は認めなかった.2日後には8.0-9.5に低下した.以上より,急速転換型CPCは,短期間Ca(OH)2と同程度の刺激を歯髄に対して生じさせ,その後は中性のpH値になり,生体親和性の高い切断糊剤として利用可能であることが示唆された.
  • 福田 敦史, 広瀬 弥奈, 八幡 祥子, 松本 大輔, 五十嵐 清治
    2005 年 43 巻 3 号 p. 433-441
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯垢の齲蝕誘発能における口腔内部位特異性を明らかにするため,上下顎前•臼歯部,頬•舌側面の8か所から採取した2日目および4日目歯垢の緩衝能を測定し,部位の差を比較検討し,以下の結論を得た.
    1.初期pHでは有意な部位の差を認め,2口目歯垢では,LAL(下顎前歯部舌側面)が最も高く,LPB(下顎臼歯部頬側面)が最も低かった(P<0.0001).4日目歯垢では,LALが最も高く,UAB(上顎前歯部唇側面),LPBが最も低かった(p<0.0001).
    2.歯垢の緩衝能については2口目,4日目歯垢ともにpH6.0-5.5,pH55-3.0のいずれも有意な部位の差を認め,LALが最も高かった(2日目歯垢;pH6.0-55:P<0.05,pH5.5-3.0:P<0.0001,4日目歯垢;pH6.0-5.5:p<0.Ol,pH5.5-3.0:p<0.001).
    3.2日目と4口目歯垢を比較した場合,初期pHでは有意差を認めなかった.緩衝能は,pH55-3.0でUPB(上顎臼歯部頬側面),UPL(上顎臼歯部口蓋側面),LPBにて有意差を認め,2日目歯垢の方が高かった(p<0.05).
    以上より,LALの歯垢は齲蝕誘発能が最も低く,反対に臨界pH以下にて緩衝能が低かったUAB,LPBの歯垢は,齲蝕誘発能が高いと思われた.また,蓄積期間の短い歯垢は長い歯垢と比べ,齲蝕誘発能が低いことが示された.
  • 中江 寿美, 岡田 貢, 河村 誠, 財賀 かおり, 林 文子, 三浦 一生, 香西 克之
    2005 年 43 巻 3 号 p. 442-448
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯科医療従事者の「学童期の歯周状態判断能力」向上を目指すためのコンピュータトレーニングソフトを開発した.そこで,本ソフトの有用性について,評価の経時的安定性を検討することを目的とした.まず,被験者となる歯科医師34名に,学童期の口腔内評価指数(Oral Rating Index for Children,ORI-C)の基準カラー写真を提示し,判定基準の理解をはかった.その後,スクリーン上に提示された24枚からなる口腔内カラー写真の歯周健康状態を5段階(+2--2)で評価させた.一致数(ゴールデン・スタンダード,GSとの一致性),再現数(5組の同一スライドの判定再現性)および的はずれ数(GSとの判定差)をもとに,1回目および2週間後に2回目の「歯周状態判断能力」を比較検討した.その結果,一致数,再現数および的はずれ数のいずれにおいても統計学的な有意差は認められず,本ソフトの経時的安定性が認められた.また,ソフト使用後に被験者に対して行った無記名のアンケート調査結果から被験者の約90%が「今回のコンピュータ・プログラムは歯周の健康レベルを理解する動機づけになる」と回答し,さらに全員が「この指数を使うためには繰り返し練習する必要があると思う」と回答した.
    以上のことから,本ソフトの経時的安定性が認められ,歯科医療従事者にとって有効な歯周保健教材になると推察された.
  • 恩田 尚余, 藥師寺 仁
    2005 年 43 巻 3 号 p. 449-462
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯,永久歯の早期喪失がなく,乳歯列完成期および永久歯列安定期に,臨床的に正常歯列であった男・女児,各10名の3歳から15歳までの上顎累年歯列模型を対象に,上顎歯列弓周長と歯間空隙量の変化を累年模型において上顎中切歯歯冠の一部が歯槽上に確認できた時点(以下,出齦と表記)を基準とする歯牙年齢で調査した結果,以下の所見を得た.
    1.乳歯列では,B-C間で最大の空隙量を示し,中切歯出齦6か月前まで変化なく,その後急速に減少した.C-D間は,中切歯出齦1年前までに半減し,出齦1年後にほぼ消失していた.A-B間は,中切歯出齦2年前まで変化を示さず,その後中切歯出齦2か月前まで僅かな増加を示した.左右A-A間は,A-B間の約半量であったが,その累年的変化はA-B間と同様であった.D-E間の空隙は,乳歯列完成時で最も小さく,中切歯出齦2年前に消失していた.
    2.混合歯列の空隙では,後継歯萌出初期に大きな量を示すが,歯冠萌出量の増加によって2-3年で消失した.しかし,4-E間は,第一小臼歯出齦に伴い重なりみられたが,第二乳臼歯脱落で解消した.
    3.総空隙量は,中切歯出齦時に最大値を示した.その後は,出齦1年6か月後まで急速に減少した後,徐々に減少し,出齦8年後にはすべての空隙が消失した.
    4.歯列弓周長は,中切歯出齦1年6か月前まで変化を示さず,その後出齦時にかけて急速に増加し,以後,ほぼ安定していた.
  • 難波 みち子, 内川 喜盛
    2005 年 43 巻 3 号 p. 463-468
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯の根尖性歯周炎の拡大は,後継永久歯に種々の障害をもたらす.今回,先行乳歯の根尖性歯周炎に起因して重度のエナメル質形成不全を伴い早期萌出した永久歯が,萌出直後に根尖性歯周炎を生じた症例について報告する.
    患児は,5歳9か月の男児で下顎左側第一乳臼歯部の疼痛と歯肉腫脹を主訴として来院した.患歯の保存を優先し,根管治療にて経過観察を行っていたが,1年8か月後にやむなく抜歯処置を施した.抜歯後間もなく,下顎左側第一小臼歯は早期萌出し,中程度の動揺と歯冠の広範囲にエナメル質の形成不全が認められた.2か月後,下顎左側第一小臼歯部の疼痛と腫脹を主訴として再来院した.エックス線検査から,歯根の形成量は1/3程度で,根尖部に透過像が認められた.急性根尖性歯周炎と診断し,水酸化カルシウム製剤を貼薬し,根尖の閉鎖を待った.下顎左側第一小臼歯は,歯根の伸展を認め,硬組織により根尖の閉鎖が認められた.根管は易破折性を考慮し象牙質接着システムを用いコンポジットレジンにて充填し,同時にファイバーポストを併用した支台築造を行った.歯冠修復は硬質レジンジャケット冠を装着し,経過観察している.
    以上から,感染を生じた幼若永久歯は状況を把握し,長期の予後を考慮した対応が重要と考えられた.
  • 大多和 由美, 辻野 啓一郎, 望月 清志, 藥師寺 仁, 武田 友孝, 石上 恵一
    2005 年 43 巻 3 号 p. 469-476
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Sturge-Weber症候群は,三叉神経分布領域における先天性の皮膚血管腫,頭蓋内石灰化と神経学的徴候を伴う同側性髄膜血管腫,二次性の緑内障を伴う脈絡膜の血管腫の3主徴よりなる,きわめてまれな症候群である.
    今回,著者らは上顎両側の血管腫に起因すると考えられる著しい上顎前突症例の患児に対し,カスタムメイドタイプ・マウスガードを応用し,良好な経過をたどっている症例を報告する.マウスガードの一般的な目的は,主としてスポーツ時の口腔外傷の予防および軽減,脳振盪の予防などがあるが,スポーツ時以外の応用法もあり,今回の症例では,スポーツ時のみならず全身麻酔の気管挿管時にも使用している.使用感は良好であり,患児は柔道の際使用すると力が入ると感想を述べていた.しかし,装着後5か月経過時に歯牙の交換や萌出に伴う歯槽骨の膨隆に伴い不適合となり,再製作した.再製の際は,側方歯群の交換と唇頬側の膨隆部に対応するよう当該部をブロックアウトした.
    患児は,定期的に全身麻酔下で顔面の血管腫性母斑に対しレーザー治療を受けている.挿管の際にも装着し,麻酔科医からも評価を得ている.
    本症例は,Sturge-Weber症候群の治療を続けつつ,柔道というスポーツに取り組んでいる.本人ばかりでなく対戦相手の安全も考慮するためにマウスガードを装着した.
    本症例の経験から同一のマウスガードが,スポーツ時のみならず,全身麻酔の気管挿管操作に伴う偶発症の予防にも有益であることが判明した.
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