乳歯,永久歯の早期喪失がなく,乳歯列完成期および永久歯列安定期に,臨床的に正常歯列であった男・女児,各10名の3歳から15歳までの上顎累年歯列模型を対象に,上顎歯列弓周長と歯間空隙量の変化を累年模型において上顎中切歯歯冠の一部が歯槽上に確認できた時点(以下,出齦と表記)を基準とする歯牙年齢で調査した結果,以下の所見を得た.
1.乳歯列では,B-C間で最大の空隙量を示し,中切歯出齦6か月前まで変化なく,その後急速に減少した.C-D間は,中切歯出齦1年前までに半減し,出齦1年後にほぼ消失していた.A-B間は,中切歯出齦2年前まで変化を示さず,その後中切歯出齦2か月前まで僅かな増加を示した.左右A-A間は,A-B間の約半量であったが,その累年的変化はA-B間と同様であった.D-E間の空隙は,乳歯列完成時で最も小さく,中切歯出齦2年前に消失していた.
2.混合歯列の空隙では,後継歯萌出初期に大きな量を示すが,歯冠萌出量の増加によって2-3年で消失した.しかし,4-E間は,第一小臼歯出齦に伴い重なりみられたが,第二乳臼歯脱落で解消した.
3.総空隙量は,中切歯出齦時に最大値を示した.その後は,出齦1年6か月後まで急速に減少した後,徐々に減少し,出齦8年後にはすべての空隙が消失した.
4.歯列弓周長は,中切歯出齦1年6か月前まで変化を示さず,その後出齦時にかけて急速に増加し,以後,ほぼ安定していた.
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