小児歯科学雑誌
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歯科治療に臨む幼児の心理分析
強い恐怖心が和らいだ1例
丸山 静江
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2005 年 43 巻 4 号 p. 522-529

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抄録

既に歯科治療に対して極度の恐怖心を持って来院した幼児について,診療室内での行動を追跡観察した.幼児は歯痛のため某歯科医院で治療を受けて以来,歯科医院へ行くことを大変嫌がり,当院へも母親に無理やり連れられてきた.
この幼児は,診療室に入室しただけでその雰囲気に適応できず,ひっくり返って大声で泣きながら足をバタバタさせて,診療台に向うのを拒否した.
「歯科ぬりえの方法」を用いた場合,今回観察対象とした幼児(3歳2か月)は,「歯科ぬりえ」にも興味を示さず繰り返し試みた簡単な予防処置に対してさえ激しい拒否反応を示した.
歯科診療が進み治療処置になると,さらに激しく拒否した.このように不協力的であった幼児が,次第に協力的になっていく様子をビデオの画面に録画し,それを以下のように詳細に観察分析した.
不協力な幼児が積極的に歯科診療を受けられるようになるため,この幼児の行動を観察,分析した結果以下のことが必要であることが分かった.
1.幼児にデンタルスタッフが心から信頼されること.この根底には,幼児-母親-歯科衛生士-歯科医師の四者相互の信頼関係を成立させるためのスタッフの耐え間ない努力が重要である.
2.幼児がこれから受ける歯科診療に対して少しでも納得し,自信をもって臨んでくれること.「歯科ぬりえの方法」を用いてインホームド・コンセントが確立していること.
3.幼児への対応法が,円滑に遂行出来ること.
4.幼児が受け入れ易い,刺激の弱い診療から始めたこと.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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