小児歯科学雑誌
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43 巻, 4 号
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  • 小島 幸美, 牧 憲司, 吉田 充広, 松本 吉洋, 西田 郁子, 西岡 孝浩, 仲西 修
    2005 年 43 巻 4 号 p. 491-496
    発行日: 2005/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    九州歯科大学歯学部附属病院障害者(児)歯科では,歯科治療に対する受容が著しく困難な小児患者に対する,薬物による行動調整下での歯科処置を積極的に行ってきた.今回著者らは,平成11年7月から平成16年6月の5年間に当科を受診し,全身麻酔法以外の薬物による行動調整下で歯科処置を実施した小児患者を対象に実態調査を行い,臨床的検討を行ったところ,以下の結果を得た.
    1.薬物による行動調整下で歯科処置を実施した症例はのべ140例,前投薬による症例は13例,笑気吸入鎮静法による症例は4例,静脈内鎮静法による症例は123例であった.
    2.適用理由は精神遅滞が54例,歯科治療非協力が37例,自閉症が21例,異常絞扼反射が18例,その他が10例(精神遅滞にてんかんを合併が5例,Down症候群に自閉症を合併が3例,Down症候群が1例,精神遅滞に脳性麻痺を合併が1例)であった.
    3.1回の静脈内鎮静法下歯科処置での平均処置時間28.7分,平均麻酔時間54.2分であった.
    4.静脈内鎮静法下歯科処置の症例数の年次推移は平成14年7月以降,増加していた.患者1人当たりの処置歯数は平均1.7歯であった.平均処置歯数の年次推移についてはほぼ横ばい状態であった.
    5.静脈内鎮静法下歯科処置において周術期の合併症はみられず,123例すべて当日帰宅した.
  • 小島 幸美, 牧 憲司, 吉田 充広, 松本 吉洋, 西田 郁子, 西岡 孝浩, 仲西 修
    2005 年 43 巻 4 号 p. 497-503
    発行日: 2005/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    九州歯科大学歯学部附属病院障害者(児)歯科では,歯科治療に対する受容が著しく困難な小児患者に対する,薬物による行動調整下での歯科処置を積極的に行ってきた.著者らはすでに,全身麻酔法以外の薬物による行動調整法(前投薬投与,笑気吸入鎮静法,静脈内鎮静法)について臨床的検討を行った.
    今回は平成11年7月から平成16年6月の5年間に当科を受診し,全身麻酔法による行動調整下で歯科処置を実施した小児患者に対して実態調査を行い,以下の結果を得た.
    1.平均年齢は8歳8か月,男性28名,女性16名,のべ44名であった.
    2,全身麻酔法の適用理由は歯科治療非協が15名,精神遅滞が12名,自閉症が7名,Down症候群が4名,精神遅滞にてんかんを合併が2名,その他が4名(脳性麻痺に精神遅滞を合併が1名,脳性麻痺に精神遅滞とてんかんを合併が1名,異常絞扼反射が1名,ねこ鳴き症候群が1名)であった.
    3.全身麻酔下歯科処置の平均処置時間は3時間17分,平均麻酔時間は4時間58分であった.
    4.全身麻酔下歯科処置の症例数の年次推移は,平成14年7月以降,増加していた.患者1人当たりの処置歯数は平均9.3歯で,年次推移については平成14年7月かから減少する傾向がみられた.
    5.全身麻酔下歯科処置において,術中の合併症として気管チューブの凝血塊による狭窄が1例みられた.術後の合併症では発熱(375度以上)が8例,嘔吐が2例みられたが,いずれも重篤な結果にはいたらず,良好に経過した.
  • 守安 克也, 篠原 左知緒, 高野 文夫, 青柳 陽子, 朝田 芳信
    2005 年 43 巻 4 号 p. 504-511
    発行日: 2005/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    1984年1月から2001年12月までの18年間に鶴見大学歯学部小児歯科外来において上顎前歯部の埋伏過剰歯を摘出した後,上顎中切歯の萌出状態を観察し得た174例について経年的調査を行った.
    過剰歯摘出後の萌出異常の発現率は34.5%であり,その内訳は萌出遅延17例(9.8%),捻転15例(8.6%),正中離開14例(8.0%),舌側傾斜13例(7.5%),唇側傾斜1例(0.6%)であった.この発現率は,摘出前の55,0%より減少していた.また,乳歯列期や混合歯列期前期に摘出した症例ほど中切歯の萌出異常の発現率が低くなる傾向が示された.摘出前の過剰歯の状態と摘出後の中切歯萌出異常の発現との関連性を統計学的に評価したところ,摘出前の根尖投影エックス線写真において過剰歯と中切歯の垂直的重複が強いほど中切歯の萌出異常の発現が高くなる傾向が示された.
    以上の結果から,上顎前歯部の埋伏過剰歯は,正常な中切歯萌出を促すためには可及的早期に摘出することが望ましいと考えられた.
  • レーザー照射出力,照射角度と照射回数における変化
    松根 健介, 丸山 明華, 荒井 清司, 岡本 春憲, 三好 克実, 清水 久美子, 渋谷 功, 根本 君也, 前田 隆秀
    2005 年 43 巻 4 号 p. 512-517
    発行日: 2005/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児歯科臨床において行われる補助弾線の鑞着操作においてNd-YAGレーザーを用いたレーザー溶接の有用性について検討を行った.主線として歯科用コバルトクロム合金サンプラチナ®矯正線直径0.7mmを使用し,補助弾線としてステンレススチールワイヤー0.016inchを用いレーザー溶接を行った.レーザー溶接は,Nd-YAGレーザーにて行い,レーザー照射出力,照射角度および照射回数を変化させたときの引張り強さの変化を検討した.その結果,レーザー照射出力が900mJ,照射角度45度から60度の条件において引張り強さが有意に高いことが示唆された.さらに,レーザー照射において,レーザー照射時に間隔をあけずに一部レーザー照射部位を重複させると,より強い引張り強さを発揮することが示唆された.また,レーザー溶接は銀鑞着に比較し引張り試験結果は低かったが,日常臨床においてはレーザー溶接による引張り強さで,十分な機能を発揮できると考えられた.さらに,口腔内にて溶接操作が行えるなどの利点もあり,レーザー溶接が有用な方法であることが示された.
  • 高木 愼, 高橋 利近, 田村 博宣, 矢部 孝, 駒井 正昭, 樋口 満
    2005 年 43 巻 4 号 p. 518-521
    発行日: 2005/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の舌下-顎下型ガマ種は比較的まれである.舌下-顎下型ガマ腫は舌下腺あるいは排泄管からの唾液の溢出により顎下部にまで貯留して起こる.舌下-顎下型ガマ種の治療は切開,開窓,摘出のみでは再発し易いと言われ,舌下腺を含めた処置が必要となり,患者の負担は大きい.しかし,小児や女性には負担の少ない,簡便な,有効な治療法が望まれる.
    今回,われわれは小児の舌下-顎下型ガマ腫に開窓術に加えて,持続的に圧迫する簡便な有効な治療法を応用し,経過良好なのでその概要を報告した.
  • 強い恐怖心が和らいだ1例
    丸山 静江
    2005 年 43 巻 4 号 p. 522-529
    発行日: 2005/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    既に歯科治療に対して極度の恐怖心を持って来院した幼児について,診療室内での行動を追跡観察した.幼児は歯痛のため某歯科医院で治療を受けて以来,歯科医院へ行くことを大変嫌がり,当院へも母親に無理やり連れられてきた.
    この幼児は,診療室に入室しただけでその雰囲気に適応できず,ひっくり返って大声で泣きながら足をバタバタさせて,診療台に向うのを拒否した.
    「歯科ぬりえの方法」を用いた場合,今回観察対象とした幼児(3歳2か月)は,「歯科ぬりえ」にも興味を示さず繰り返し試みた簡単な予防処置に対してさえ激しい拒否反応を示した.
    歯科診療が進み治療処置になると,さらに激しく拒否した.このように不協力的であった幼児が,次第に協力的になっていく様子をビデオの画面に録画し,それを以下のように詳細に観察分析した.
    不協力な幼児が積極的に歯科診療を受けられるようになるため,この幼児の行動を観察,分析した結果以下のことが必要であることが分かった.
    1.幼児にデンタルスタッフが心から信頼されること.この根底には,幼児-母親-歯科衛生士-歯科医師の四者相互の信頼関係を成立させるためのスタッフの耐え間ない努力が重要である.
    2.幼児がこれから受ける歯科診療に対して少しでも納得し,自信をもって臨んでくれること.「歯科ぬりえの方法」を用いてインホームド・コンセントが確立していること.
    3.幼児への対応法が,円滑に遂行出来ること.
    4.幼児が受け入れ易い,刺激の弱い診療から始めたこと.
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