九州歯科大学歯学部附属病院障害者(児)歯科では,歯科治療に対する受容が著しく困難な小児患者に対する,薬物による行動調整下での歯科処置を積極的に行ってきた.著者らはすでに,全身麻酔法以外の薬物による行動調整法(前投薬投与,笑気吸入鎮静法,静脈内鎮静法)について臨床的検討を行った.
今回は平成11年7月から平成16年6月の5年間に当科を受診し,全身麻酔法による行動調整下で歯科処置を実施した小児患者に対して実態調査を行い,以下の結果を得た.
1.平均年齢は8歳8か月,男性28名,女性16名,のべ44名であった.
2,全身麻酔法の適用理由は歯科治療非協が15名,精神遅滞が12名,自閉症が7名,Down症候群が4名,精神遅滞にてんかんを合併が2名,その他が4名(脳性麻痺に精神遅滞を合併が1名,脳性麻痺に精神遅滞とてんかんを合併が1名,異常絞扼反射が1名,ねこ鳴き症候群が1名)であった.
3.全身麻酔下歯科処置の平均処置時間は3時間17分,平均麻酔時間は4時間58分であった.
4.全身麻酔下歯科処置の症例数の年次推移は,平成14年7月以降,増加していた.患者1人当たりの処置歯数は平均9.3歯で,年次推移については平成14年7月かから減少する傾向がみられた.
5.全身麻酔下歯科処置において,術中の合併症として気管チューブの凝血塊による狭窄が1例みられた.術後の合併症では発熱(375度以上)が8例,嘔吐が2例みられたが,いずれも重篤な結果にはいたらず,良好に経過した.
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