小児歯科学雑誌
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乳歯列期に正常咬合である小児の叢生発現の過程に関する縦断研究
海原 康孝財賀 かおり中江 寿美蔵本 銘子槇平 美夏鈴木 淳司香西 克之
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2006 年 44 巻 5 号 p. 649-656

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抄録

乳歯列期に正常咬合であり,かつ歯列弓に生理的空隙が認められた小児を,永久歯列になった段階で叢生であったもの(叢生群)と叢生でなかったもの(非叢生群)の2群に分類した。二つの群の成長発達に伴う歯列弓の変化の違いについて,歯列研究用模型を用いて縦断的に比較検討を行った。結果は以下の通りである。
1.乳歯列期に正常咬合でありかつ歯列弓に生理的空隙を認めた小児のうち,43.8%の者が永久歯列になった段階で叢生であった。
2.叢生群は非叢生群に比べて乳歯列の空隙の出現する部位が少ない傾向が認められた。
3.歯冠近遠心幅径は,乳歯,永久歯とも叢生群の方が非叢生群よりも大きい傾向にあった。また,永久切歯の歯冠近遠心幅径の合計と乳切歯の歯冠近遠心幅径の合計の差も,上下顎ともに叢生群の方が非叢生群よりも大きい傾向にあった。
4.上下顎ともに,叢生群は非叢生群よりも,犬歯間幅径の各年齢における値および4歳から12歳までの増加量が小さい傾向にあった。
5.歯列弓長径の平均値および変化量は,両群間で差はみられなかった。また,両群ともに歯列弓長径の増加量は,犬歯間幅径のそれより小さかった。
6.混合歯列期に叢生である歯列は,永久歯列になっても叢生であるものが多かった。以上より,叢生の発現に関しては,乳歯列の空隙量に加えて,歯冠近遠心幅径,歯列弓幅径の大きさおよび増加量,混合歯列期に叢生であるかどうかについて着目すべきであることが示唆された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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