日本体育学会大会予稿集
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第67回(2016)
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学際的シンポジウムⅢ
大島鎌吉が遺したオリンピックの思想
滝口 隆司
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p. 24_1

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抄録

 2014年11月から毎日新聞朝刊2面で「五輪の哲人 大島鎌吉物語」という企画記事を長期連載した。大島の略歴を紹介しよう。石川県出身で、1932年ロサンゼルス五輪の陸上三段跳びの銅メダリスト。関西大学から毎日新聞社に入り、戦時中はベルリン特派員を務めた。戦後は運動部記者として活躍する一方、陸上競技で後進の育成にあたり、東京五輪では選手強化対策本部長や日本選手団長の重責を担った。底辺スポーツの発展にも意欲を注ぎ、日本スポーツ少年団の創設に貢献。大阪体育大学の開学と同時に副学長となり、晩年はスポーツを通じた平和運動にも傾注した。

 大島の原点は従軍記者として戦場を駆け巡ったベルリン特派員時代の体験であり、ドイツのスポーツ関係者との交流にある。中でもドイツの「哲人」カール・ディームから受けた影響は大きい。オリンピック運動の真髄を追い求め、76年の生涯を経てたどり着いた結論は「オリンピックはフェアプレーを信じる地球上の人々の願いが集まる世界宗教」だった。しかし、現代のオリンピックは巨大イベントの道を突き進み、国家間の政治的争いやビジネスが持ち込まれ、不正も相次ぐ。こんな時代だからこそ、大島思想をもう一度見直したい。

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