主催: 一般社団法人 日本体育学会
会議名: 日本体育学会第70回大会
開催地: 慶應義塾大学日吉キャンパス
開催日: 2019/09/10 - 2019/09/12
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今日のスポーツ世界、とりわけ競技スポーツの世界では様々な道徳的問題が起こっている。それらの事象はたんにスポーツ行為者のみに起因する問題ではなく、商業主義や勝利至上主義に付随する便益や利得など、種々の媒介者を取り巻いて起こっているといえるだろう。これらの問題を経験的知見から実践的にのみ考察することは、多様化する今日のスポーツ世界において臨界点を迎えているといってもいいだろう。
本研究では、スポーツ界における道徳的問題を、今一度、個別経験的な事象から、スポーツ世界における道徳法則の原理に立ち戻り、検討することを目的とする。原理的な道徳に関する形而上学的視点を、その射程に収め、カントの著作である『Grundlegung zur Metaphysik der Sitten 道徳形而上学の基礎づけ』を手がかりに考察していく。
とりわけ、カントの道徳法則のうち、純粋実践理性のもたらす、行為の原理となる「定言命法」および、その「法則」に焦点を当てる。そして、経験的諸要素から離れた、内からの道徳法則について整理したうえで、スポーツ世界の道徳法則について検討するものである。