日本体育・スポーツ・健康学会予稿集
Online ISSN : 2436-7257
第72回(2022)
セッションID: 3Gym162-79-11
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体育方法 ポスター発表
柔の形にみる身体運動としての柔道と内在する思想の接点
*稲川 郁子
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抄録

嘉納治五郎は1889(明治22)年の講演の中で、「講道館柔道は(中略)体育と勝負と修心との三つのことを目的と」すると述べている。体育については「筋肉を適当に発達させること身体を壮健にすること力を強うすること身体四肢の働きを自在にすることなど」とし、身体運動としての柔道の意義を説いた。勝負については、武術性を重視した技術の重要性を、さらに修心について「徳性を涵養することと智力を練ることと勝負の理論を世の百般のことに応用して物に接し事に当っておのずから処すところの方法に熟練させること」としている。他の身体運動や競技と異なり、柔道は、身体運動に随伴する徳性を大きな特徴とする。柔道修行者は身体運動および攻防の技術としての柔道修行に励む一方で、例えば「精力善用・自他共栄」の思想を学ぶが、有山は「相手との攻防の錬磨によって得られる能力やスキルと、円滑に社会生活を送るための能力やスキルに共通の要素がある」前提が必要であるとする。講道館柔道の複数の形については、時々の機関誌にその技術論が掲載されたが、嘉納自らの記述はまれである。本研究では、嘉納が自ら技術論を執筆し柔道の柔を冠した「柔の形」の身体運動から、柔道に内在する思想のうち特に精力善用との関連について述べる。

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© 2022 一般社団法人日本体育・スポーツ・健康学会
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