日本体育・スポーツ・健康学会予稿集
Online ISSN : 2436-7257
第73回(2023)
セッションID: 3a704-04-01
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体育史 口頭発表
ライプチヒ学派「トレーニング論」の変遷(3)
「トレーニング状態(Trainingszustand)」という概念について
*綿引 勝美
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抄録

第三報では,1969年版と1979年版のトレーニング論の第三章に着目し,その基幹概念(パフォーマンス能力,パフォーマンス発達,負荷,負荷要因,負荷操作等」の意味内容を比較対照する.①章名が1969年「トレーニング状態の発達」から1979年「スポーツパフォーマンス能力の形成」に変更された.トレーニング状態という現象を記述する用語から,その現象(「顕性」)を生成する可能態,ないしは「潜性」を記述する「パフォーマンス能力」という用語が提示されることとなった.②この点は内容の変更にも反映し,1969年「3.3. トレーニング負荷によるトレーニング状態の発達」から1979年「3.3. トレーニング負荷によるスポーツパフォーマンス能力の向上」に変更された.③トレーニング負荷に関する記述にも大きな変更が認められる.1969年「3.3.3. 負荷要素を用いた外的負荷の操作」1979年「3.3.3. 負荷要求の操作」と,項名が変更された.④この項の記述内容としては,1969年版では,「身体能力の発達に対する負荷要素の作用についてはまだ十分な認識にいたっていない」ということから,負荷要素を扱うときの留意点として次の5点が指摘された.1.刺激強度,2.刺激密度,3.刺激持続時間,4.刺激量,5.トレーニング頻度,である.1979年版では,「負荷要求の質的量的構成は,負荷要因,負荷手法,負荷構造,を考慮して行われる.」とされ,質的量的操作への基礎づけが行われ,負荷要因として,1.身体エクササイズ,2.動作の質,3.負荷強度,4.負荷密度,5.負荷量,6,負荷持続時間,が示された.⑤1976年版には,負荷手順と負荷構造に関する記述,さらに,新たに「負荷と回復の統一性」という項目が加えられた.トレーニング状態という現象に対する指導経験知から科学的研究にもとづいたより操作的な知への接近が認められる.

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© 2023 一般社団法人日本体育・スポーツ・健康学会
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