抄録
【目的】生体肝移植後早期脂肪肝発症における危険因子と栄養学的意義について検討した。【対象および方法】2010年5月から2012年9月までに当院で生体肝移植を施行した62例を脂肪肝群と非脂肪肝群に分類し、脂肪肝診断日、程度、両群間の理想体重(IBW)当たりの投与エネルギー量、Non-protein calorie/Nitrogen(NPC/N) 、栄養投与法、栄養素比率、肝生検施行日前3日以内の生化学データ、エイコサペンタエン酸(EPA)/アラキドン酸(AA)、移植後早期脂肪肝の危険因子、脂肪肝群における診断前後の生化学パラメーターと EPA/AA変化を検討した。【結果】両群間で IBW当たりの投与エネルギー量、NPC/N、生化学データ、EPA/AAに有意差を認めず。脂肪肝群で投与エネルギー量の過剰および不足の2峰性分布を認め、これらは脂肪肝発症の独立危険因子(オッズ比:33.778、p<0.001)であった。また EPA/AAは脂肪肝診断前後で0.261±0.028から0.206±0.024と有意に低下した(p=0.017)。【結論】生体肝移植後早期脂肪肝はエネルギー過剰又は不足投与で発症し、独立危険因子であった。脂肪酸分画は、移植後脂肪肝のパラメーターとして有用と考えられた。