日本静脈経腸栄養学会雑誌
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30 巻 , 2 号
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特集
  • 海塚 安郎
    2015 年 30 巻 2 号 p. 647-657
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    重症患者における代謝・栄養管理の重要性は、広く認識されている。急性期の栄養療法時どの程度のエネルギー量を設定するか、どのように投与計画を立てるべきかについて、未だ一定の見解を得るには至っていない。そのような現状において、5編のガイドラインの記載、および近年に行われた初期投与エネルギーの設定に関連した、質の良い5編の無作為化試験(RCT)について解説した上で、最後に当院における間接熱量測定データを示した。海外におけるRCTの結果からは、入院時栄養状態の良好な患者においては、25-30kcal/kg/日をゴールエネルギー量に設定しつつも、初期7日程度は、経腸栄養から400kcal/日程度の少なめの投与エネルギーが消化器症状の低減からも望ましい可能性がある。ただし、本邦ICU症例に少なからず存在する、るい痩もしくは栄養障害症例では、医療者が患者個別性を反映し、最大限の効果を得、リスクを最小とする投与エネルギーおよび投与法設定を繰り返す各種モニタリングのもとに実施する必要がある。本邦ICU症例に対する至適投与エネルギー量を検討した質の高いRCTが待たれる。
  • 巽 博臣, 升田 好樹, 後藤 京子
    2015 年 30 巻 2 号 p. 659-663
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    重症患者における早期経腸栄養の重要性が認識されている。経腸栄養管理の開始時には循環の安定性や腸管機能の評価を行う必要がある。消化管に問題がなく、循環動態が安定していれば早期に経腸栄養を開始すべきであり、開始時期の遅れは腸管麻痺の遷延、bacterial translocationにつながる。大量のカテコラミンを必要とする病態、腸管虚血/壊死のリスクが高い病態での経腸栄養投与は難しい。一方、経腸栄養開始後は嘔吐や下痢などの合併症が問題となる。嘔吐に対しては、頭側挙上、持続投与や経空腸投与への変更、腸管蠕動改善薬の投与などの有用性が報告されている。また、下痢に対しては、経腸栄養の投与量や投与時間の調節、経空腸投与から経胃投与への変更、腸管蠕動に関与する薬剤の調整、栄養剤の変更(食物繊維含有、低浸透圧、ペプチド、半固形化)などの対策が考えられるが、有効性を示す十分なエビデンスは得られていない。
  • 佐藤 格夫, 大嶽 康介, 苛原 隆之, 播摩 裕, 邑田 悟, 森 智治, 大鶴 繁, 小池 薫
    2015 年 30 巻 2 号 p. 665-668
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    重症患者に対する栄養は、“可能なら早期経腸栄養”が唱えられ、呼び名は統一されていないが免疫増強栄養剤、免疫賦活栄養剤、免疫調整栄養剤などの投与が重症患者の栄養投与で脚光を浴びてきた。臨床研究が行われ、それを基にガイドラインが作成されてきたが、明確なエビデンスに基づいているものが少ないのが現状である。経腸栄養剤にはそれぞれ特徴があり、病態および消化吸収能に応じた経腸栄養剤選択を選択していく必要がある。重症患者の急性期栄養療法に関して、経腸栄養剤に何を選ぶべきか概説をする。
  • 神應 知道
    2015 年 30 巻 2 号 p. 669-673
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    重症患者に対し,経腸栄養の不足分をいつから,どのような症例に開始すべきか,そして静脈栄養の組成はどのようにすべきかに関しては現状では不明である。近年報告された重症患者の栄養投与量を比較したRCTは4編あるが,研究結果は一定の方向を示せず確定的な推奨を提唱することは困難である。重要なことは,underfeeding,overfeedingを避け,個々の患者の状態に合わせ栄養投与内容を検討することである。4編のRCTの結果を踏まえ,ICU入室時に栄養不良を認めない例においては,経腸栄養投与エネルギー量が400~500kcal/日を満たしていれば1週間は静脈栄養を行わない。ICU入室時に栄養不良を認める例においては,入室数日以内に,refeeding症候群,高血糖に十分注意しながらブドウ糖,タンパク質,脂肪を使用した静脈栄養を開始することが望ましいと考えられる。
  • 深柄 和彦
    2015 年 30 巻 2 号 p. 675-678
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    完全静脈栄養法の開発が栄養療法、いや医学における最高の進歩の一つであることは異論のない事実であろう。その後、エポックメイキングな進歩が見られなかった臨床栄養の歴史の中で、アルギニンやグルタミン、ω -3系脂肪酸、抗酸化物質などの免疫栄養による生体反応の改善は、われわれ臨床栄養に関わる者たちにとって誇らしい進歩の象徴であった。
    ところが、ここ数年、免疫栄養に関するエビデンスが覆され、臨床での応用に疑問符が投げかけられている状況になっている。本稿では、これら免疫栄養のこれまでの流れを振り返り、今、何を臨床の現場で信じていけばいいのか概説したい。
  • 清水 孝宏, 松山 美智子, 豊見山 直樹
    2015 年 30 巻 2 号 p. 679-683
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    経腸栄養法を行う場合、経腸栄養チューブの先端が目的とする場所に留置されているかを確認しなければならない。その理由として誤って気道内に留置され気胸を発症するリスクがあることや、栄養剤等が気道に注入されることで誤嚥性肺炎を起こす危険性があるからである。挿入された胃管の先端位置を確認する方法は X線撮影による確認、気泡音による確認、呼気二酸化炭素検出による確認などがあるが最も信頼性のある確認方法は X線撮影による確認である。
    胃内残量については経腸栄養を胃内投与した場合の消化管の耐性を評価する目的で行われている。胃内残量が500mL以上と多い場合には栄養剤注入を中止すべきであると、国内外のガイドラインで記載されているが明確な根拠があるわけではない。
    経腸栄養は安全性を確保しつ、可能な限り中断せずにステップアップし適切な量を維持することが重要である。そのためのチューブ位置確認や胃内残量管理は注目すべき事柄であろう。
原著
  • 田中 明美, 谷口 英喜, 牛込 恵子, 工藤 雄洋, 上島 順子, 阿部 咲子, 苅部 康子
    2015 年 30 巻 2 号 p. 685-688
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究は、介護現場における入浴介助者の体液喪失の程度と環境について、非侵襲的手法を用い分析し、入浴介助者に必要な補水量を明らかにし、補水の必要性を提言することを目的とした。その結果、施設、季節を問わず、介助者に1時間に約200mL程度の体液の減少が起きていた。自由飲水をしているにもかかわらず適切な補水ができていなかった。現場環境も高温多湿であった。本研究の結果から、安全な入浴環境を構築するには適切な補水と介助現場の環境改善を行うことが望ましいと考えた。
  • 村松 美穂, 長 晴彦, 吉川 貴己, 小池 美保, 山内 実代, 廣瀬 望美, 山崎 道代, 林 勉, 中田 恵津子
    2015 年 30 巻 2 号 p. 689-695
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】術後およそ30日目と90日目に実施している外来栄養指導を活用し、胃癌術後の摂取エネルギー量と食事内容を経時的に調査・検討した。【対象及び方法】当院で胃癌の手術を受け、術後30日目と90日目の栄養指導に参加した42名を対象とした。摂取エネルギー量と食事内容は自己記入式の食物摂取頻度調査票から推定した。【結果】推定摂取エネルギー量の減少ピークは術後90日以内にみられ、術後90日頃には増加するものの術前の摂取量までは回復しなかった。食事内容は、食品群別では肉類・油脂類の摂取が大きく減少し、三大栄養素では炭水化物の減少割合が最も大きく、食事内容に偏りがみられた。【結論】こうした変化は無意識に特定の食品を避けたことに起因することもあり、退院後も食事内容の偏りを補正するため、早期に栄養指導を実施する必要がある。また、術後90日では食事摂取は安定したとはいえず、長期栄養管理の必要性が示唆された。
  • 玉井 由美子, 海道 利実, 藤本 康弘, 小川 晃平, 森 章, 幣憲 一郎, 上本 伸二, 稲垣 暢也
    2015 年 30 巻 2 号 p. 697-702
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】生体肝移植後早期脂肪肝発症における危険因子と栄養学的意義について検討した。【対象および方法】2010年5月から2012年9月までに当院で生体肝移植を施行した62例を脂肪肝群と非脂肪肝群に分類し、脂肪肝診断日、程度、両群間の理想体重(IBW)当たりの投与エネルギー量、Non-protein calorie/Nitrogen(NPC/N) 、栄養投与法、栄養素比率、肝生検施行日前3日以内の生化学データ、エイコサペンタエン酸(EPA)/アラキドン酸(AA)、移植後早期脂肪肝の危険因子、脂肪肝群における診断前後の生化学パラメーターと EPA/AA変化を検討した。【結果】両群間で IBW当たりの投与エネルギー量、NPC/N、生化学データ、EPA/AAに有意差を認めず。脂肪肝群で投与エネルギー量の過剰および不足の2峰性分布を認め、これらは脂肪肝発症の独立危険因子(オッズ比:33.778、p<0.001)であった。また EPA/AAは脂肪肝診断前後で0.261±0.028から0.206±0.024と有意に低下した(p=0.017)。【結論】生体肝移植後早期脂肪肝はエネルギー過剰又は不足投与で発症し、独立危険因子であった。脂肪酸分画は、移植後脂肪肝のパラメーターとして有用と考えられた。
症例報告
  • 青山 有紀, 雨宮 馨, 星 博子, 村越 孝次, 輿水 三枝子
    2015 年 30 巻 2 号 p. 703-707
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    重度の脳性麻痺で難治性てんかん児へのケトン食療法を消化態栄養剤からエネルギー、水分量等を調整しながら徐々にケトンフォーミュラミルク®へ移行した。それと併せて、不足するビタミン・ミネラル類についてサプリメントを使用して、ケトン食療法を有効かつ安全に導入し、けいれん発作を軽減することができた2症例について報告する。
  • 関 仁誌, 小池 泰子, 鈴木 政哉, 春原 ゆかり, 馬島 園子, 小林 香, 町田 典子, 鈴木 英二, 小松 千紘, 小林 宏正
    2015 年 30 巻 2 号 p. 709-711
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の女性で幽門側胃切除後,経過観察中に下腿浮腫,低蛋白血症を指摘された.上部消化管内視鏡検査で残胃に約60mmの分葉状に隆起する1型腫瘍を認め,99mTc標識ヒト血清アルブミンシンチグラフィにて腫瘍からの蛋白漏出が確認されたため,蛋白漏出性残胃癌と診断した.残胃に発生した蛋白漏出性胃癌は,検索した限り報告例がなく,極めてまれであった.栄養状態の改善を目的に術前から NSTが介入し栄養管理を行った.術前は,栄養調整食品を用いた経口栄養と中心静脈栄養を併用した.残胃全摘術,膵体尾部,脾臓合併切除術を施行し上部小腸に栄養チューブを留置した.残胃には表層の多くを壊死物質に覆われた分葉状に隆起する大型の病変がみられ,病理組織学検査では病変部の表層を中心に多くの部分に凝固壊死を認め,出血や,好中球,リンパ球などの炎症細胞浸潤が目立っていた.術後は早期経腸栄養療法を行った.術後経過は良好で,低蛋白血症,下腿浮腫は速やかに改善した.周術期栄養管理が有効であった蛋白漏出性残胃癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
臨床経験
  • 山田 博文, 原 宏明, 木坂 京子
    2015 年 30 巻 2 号 p. 713-716
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    「目的」終末期癌患者の在宅静脈栄養法(home parenteral nutrition;以下、HPNと略)が延命期間を延長する可能性について報告がある.我々は、食事摂取が低下した状態の終末期癌患者に対して癌治療における栄養治療の一環として HPN治療を導入した.治療経過について報告する.「対象及び方法」2005年1月から2011年5月の間に33名の終末期患者に HPNを導入した.「結果」 HPNを導入した患者背景は、平均年齢が66歳であった.男性25名(76%)であり、導入原因の症状は癌性腹膜炎や消化管狭窄、食欲不振であった.平均在宅日数が65.1日であった.32名は死亡されおり、当院にて死亡された方が25名(72%)であった.その内再入院後から死亡されるまで期間は25日であり、4日以内の患者が28%認められた.「結論」平均在宅日数は比較的長かったが、時間的な制約があるため導入までの調整が重要であった.患者の多くが当院にて死亡されており、地域連携と再入院時の対応が重要であった.
  • 田中 智大, 駒澤 伸泰, 山村 典子, 立石 和也, 斎藤 みどり, 佐々木 典子, 藤本 智美, 南 敏明
    2015 年 30 巻 2 号 p. 717-720
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】大腿骨頚部骨折症例は、高齢者が多く、臥床期間が長いため、周術期譫妄及び認知症周辺症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;以下、BPSDと略)を誘発しやすい1)。当院で大腿骨頚部骨折の手術を受ける高齢者における周術期の栄養摂取状況と栄養状態の推移を検討した。【方法】対象患者は、全身麻酔下に大腿骨頚部骨折手術を実施した70歳以上の高齢者とし、周術期譫妄及び BPSDによる危険行動を起こした群(C群32例)と起こさなかった群(N群23例)に分類して、後方視的に検討を行った。【結果】C群は N群と比較して、年齢(p=0.0003)・認知症の既往を有する割合(p=0.0002)の項目が有意に高値であった。また、入院時から術後7日目までの平均喫食率(p=0.0216)・入院時と比較した術後7日目の血清アルブミン値(p=0.0191)は有意に減少し、入院時と比較した術後7日目の CONUT score(p=0.0002)は有意に上昇した。【結語】周術期譫妄及び BPSDによる危険行動は、術後早期の栄養摂取状況にも影響を及ぼす。そのため、譫妄のハイリスク患者に対する低栄養防止への包括的な予防対策が重要である。
  • 荻野 晃, 濱田 広幸, 信太 博, 酒井 雄三, 高山 哲夫
    2015 年 30 巻 2 号 p. 721-726
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】L-カルニチンは長鎖脂肪酸の代謝と脂肪酸分解によるエネルギー産生に重要な役割を果たしている。一方、静脈・経腸栄養患者では L-カルニチン血清濃度の低下が報告されており、補充の必要性が指摘されている。今回、長期経腸栄養施行患者に対し L-カルニチン配合流動食サンエット®-SAの投与を行い、血清カルニチン分画の改善と脂質代謝に与える影響について検討した。【対象と方法】長期経腸栄養管理患者11例を対象とし、サンエット®-SAの投与を行った。サンエット®-SA投与1ヶ月後、6ヶ月後に血清カルニチン分画(総カルニチン濃度、遊離カルニチン濃度、アシルカルニチン濃度)の分析、身体計測、及び血液生化学検査を実施した。【結果】サンエット®-SA投与により血清カルニチン濃度(総カルニチン濃度、遊離カルニチン濃度、アシルカルニチン濃度)の有意な上昇とアシルカルニチン /遊離カルニチン濃度比の適正な比率が認められた。また、アルブミン値の増加傾向、及び %上腕三頭筋皮下脂肪厚、AST、ALTの減少傾向が認められた。【結論】長期経腸栄養患者における血清カルニチン分画の改善と L-カルニチン欠乏予防にサンエット®-SAは有用であることが示唆された。
日本静脈経腸栄養学会認定地方研究会
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