日本静脈経腸栄養学会雑誌
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症例報告
大腸ステントを挿入した閉塞性左側結腸癌術後にビタミンK欠乏症に起因する術後腹腔内出血が疑われた1例
西原 佑一門松 賢大鶴 洋
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2016 年 31 巻 2 号 p. 731-734

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抄録

症例は慢性腎不全を既往に持つ80歳女性で、大腸癌による腸閉塞と診断された。大腸ステントを留置し、留置後14日目に開腹手術を施行した。抗生剤は腎機能に配慮し減量して使用した。術後6日目にドレーン抜去孔から突然血性排液が流出し、単純 CTで腹腔内出血を認めた。凝固検査では PT、PT‐INR、APTTの異常延長およびビタミン K(以下、VKと略)依存性凝固因子の著明な低下を認め、VK欠乏による術後腹腔内出血を疑い VK製剤を投与した。その後速やかな止血が得られ、術後23日目に近医へ転院した。腎不全患者は食事制限を要するため、慢性的な VK欠乏状態に陥っている。日常生活では支障がなくとも外科手術のような高度侵襲が加わる際には、腎不全に配慮した食事摂取に加え、抗凝固療法の有無に注意しながら VK含有量の多い食品やサプリメント等での積極的な補充が重要であると考えられた。

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© 2016 日本静脈経腸栄養学会
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