日本静脈経腸栄養学会雑誌
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特集
便移植
山田 知輝
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2016 年 31 巻 3 号 p. 811-816

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抄録

再発性のClostridium difficile感染症(CDI)に対して便移植を行い90%近い治癒率が得られたとする RCTが発表され、注目を集めている。CDIは抗菌薬使用により、正常腸内細菌叢が減少し、菌交代現象が起こり増殖したClostridium difficileが毒素を産生し腸炎を発症させる病態であり、便移植は健常者(ドナー)から得た腸内細菌叢を含む糞便を投与することで、健康状態の腸内細菌叢を復元し、これを治癒しようとするものである。現在ではその適応や、ドナーの選定・スクリーニング、便の準備や投与方法につき、定まりつつあるがまだ十分ではなく、かつ安全性の問題もある。アメリカでは「便の銀行」が設立され、事前にスクリーニングされた、若くて健康なドナーの便の貯蓄により、より多くのケースで便移植ができるような体制ができつつある。今後は安全性を高めた製剤も開発中であり、日本も含め、その使用がさらに広がる可能性がある。

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© 2016 日本静脈経腸栄養学会
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