日本静脈経腸栄養学会雑誌
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特集
臨床栄養で活用される漢方薬のエビデンス
川原 央好
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2017 年 32 巻 2 号 p. 942-945

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抄録

漢方薬は中国や日本で紀元前後から長い時間をかけて発展してきたが、東洋医学に基づき使われてきたため、西洋医学中心の医療現場、特に臨床栄養の現場ではその使用は限られていた。近年、漢方薬への理解の高まりから、様々な医療現場で全人的治療のために漢方薬が導入されるようになってきている。栄養管理中に活用できる漢方薬として、下痢・便秘や経口摂取増加に関連した消化器に作用する方剤、栄養状態や代謝に影響を与える補剤、精神状態の安定化を図る方剤などがあり、それぞれの臨床的有用性が報告されてきている。稀ではあるが偽アルドステロン症、間質性肺炎、肝機能障害など漢方薬による有害事象も報告されており、漢方薬の使用にあたってはこれらの知識も必要である。腸内microbiomeと関連した漢方薬の吸収・代謝やヒトにおける作用機序に関する基礎研究の発展が待たれるが、栄養管理に携わる医療関係者の漢方薬診療経験の蓄積と共有が、今後、漢方薬が活躍の場を広げていくためのキーファクターとなると考えられる。

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© 2017 日本静脈経腸栄養学会
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