体力科学
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運動中の心搏週期の変動に関する研究
第2編長距離全力疾走中の心搏週期と呼吸の変動経過について
宇都山 登
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1961 年 10 巻 1 号 p. 90-98

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抄録

心電図と呼吸運動の短波無線同時搬送装置を使用して, 長距離疾走に於ける心電図と呼吸波を同時に搬送記録した。この心電図から心搏週期としてR-R間隔, 呼吸波から呼吸週期を計測し, 運動中の心搏週期と呼吸週期の変動経過と呼吸波及び長距離疾走時にみられるdead point, second windとこれらとの関係について, 短距離疾走の場合と比較して考察した。得られた結果をまとめると;
1) 長距離疾走による心搏週期の下降 (短縮) 現象は初期下降, 第2次下降, 第3次下降, 及びsteady stateに分けられ, 長距離疾走の初期下降及び第2次下降は, 短距離疾走の初期下降及び最小心搏週期に至る迄の下降現象によく一致する。
2) 疾走開始前の平均心搏週期が約0.6秒以上の例では, その値の如何に拘わらず次の現象がおこる。
(i) 疾走開始前の心摶週期の動揺は呼吸性変動の他に週期の長い大きい変動が現われる。
(ii) 疾走開始直後の初期下降に於ける心摶週期は約0.5秒迄急激に下降する。
(iii) 急激な初期下降に続いて心摶週期は約0.5秒附近で1~2回大きく動揺し, この動揺は短距離疾走の場合に比較して, 遅く出現し, 振幅は小さく, 持続時間は短い。
3) 疾走開始前の平均心搏週期が約0.5秒の例では, 疾走開始直後の心捕週期の急激な下降及び大きい下降動揺は認められず, 直ちに第2次下降が始まる。
4) 長距離疾走時の心摶週期のsteady stateに於ける平均値は0.30秒より短縮することはない。
5) 疾走の全経過を通じて認められる心搏週期の微細動揺は呼吸性動揺である。又この呼吸性動揺の振幅は5~20秒の週期で土0.02秒の範囲で増減する。
6) 呼吸週期は疾走開始と同時に下降 (短縮) し, その初期下降は心搏週期の初期下降と全く同時に現われる。
7) 疾走の全経過中, 呼吸週期は10~40秒の週期で安定と動揺を繰り返す。
8) 多くの場合長距離疾走では, 後半に週期2~7秒の呼吸波水準の週期的動揺による波動性呼吸波が出現する。
9) 長距離疾走中のdead pointの附近に於ては, 心搏週期或はその動揺には変化が認められないが, 呼吸週期の動揺と呼吸水準の週期的動揺 (波動性呼吸波) は多く出現する。

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© 日本体力医学会
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