体力科学
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運動中の心搏週期の変動に関する研究
第1編短距離全力疾走中の心搏週期の変動経過について
宇都山 登
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1961 年 10 巻 1 号 p. 81-89

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抄録

著者らの考案した心電図の短波無線搬送記録装置を使用して, 勾配30°, 距離40m, 112段の石段を全力疾走で駈け登るときの心電図を, 運動前から運動中, 更に絡了後恢復経過を含めて連続記録して, その心電図のR-R間隔を計測し, 心摶週期の変化と動揺の経過について考察した。被検者はスポーツマン群として高校野球部選手, 非スポーツマソ群として同校同学年の健康者5例ずつを選んだ。実験結果をまとめると,
1) 心搏週期は疾走開始直後1~3秒の間に急激な下降 (短縮) を示し, 約0.45秒まで短縮す
る。
2) 一旦下降した心捕週期は再び上昇 (延長) し, 更に約2回ほど大きく動揺し, このときの平均心搏週期は約0.5秒である。
3) 以上の現象は疾走前の平均心搏週期が約0.6秒以上の者に起る。
4) 疾走開始前の平均心搏週期が約0.5秒又はそれ以下のときには上記の1) , 2) の現象は起らない。
5) 疾走中期と終期に心撞週期は振幅約0.1秒の大きい動揺と, 0.01~0.04秒程度の微細動揺を示す。この微細動揺は呼吸性動揺であろうと推察される。
6) 平均最小心搏週期は0.34秒 (心捕数にして約176) で, このような短距離の全力疾走に於ては, 約0.31秒以下 (心搏数にして約190以上) にはならない。
7) 恢復経過は段階的に起り, 心搏週期は動揺と安定を繰り返す。疾走停止後1分30秒~2分迄は急速に恢復するが, それ以後の恢復は徐々に, 進む。
8) 疾走中から停止後に続く最小心搏週期の初期の恢復は, スポーツマン群の方が非スポーツマン群より早い。
9) 疾走停止後1~5分迄の恢復は, スポーツマン群の方が非スポーツマン群より早い。

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