抄録
51才から75才までの, 長距離走トレーニングの長期継続者7名の体力測定を行い次のような結果を得た。
(1) 平均の体重あたり1分間最大酸素摂取量は43.7mlであった。
(2) オールアウト走での平均最高心拍数は170, 最大呼吸数は56.4であった。
(3) 分速120m歩行で, 最高心拍数はオールアウト走の約80%, 最大呼吸数は約64%, 酸素摂取量は約77%であった。
(4) 心拍数200前後で約1時間のランニングが可能な例が認められた。
(5) 歩行及びランニングにより収縮期血圧は上昇したが, 終了後5~10分以降は運動開始前より低下した。
(6) 高年者に彼等の能力を合理的に発揮できるようにランニングを処方する場合は速度の調節が重要であり, 少くともスタート直後は充分に抑えておくべきである。
(7) 男子の下腿囲は標準値より相当太く, 女子のそれは標準値にほぼひとしかった。
(8) 皮脂厚は非常にうすかった。
(9) 肺活量1秒率及び反復横とびは年令水準より良かったが, 握力, 垂直とび, 伏臥上体そらし, 立位体前屈, 静的脚筋持久力は必ずしも強いとは認められなかった。
(10) 心臓は必ずしも大きくなく, 体位血圧反射も年令相応と認められた。
(11) いわゆる運動鍛練性貧血が明らかに認められた。