体力科学
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前腕部屈伸運動の再現性について
永田 晟北本 拓室増 男
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1976 年 25 巻 2 号 p. 71-77

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抄録
前腕部の屈伸運動による原学習をおこなった後, ショート・タームな運動の再現学習を実施し, 前腕部 (末梢部) を中心とする運動再現特性の基礎資料を得た。運動リズム, 負荷量, 運動距離等の条件変化による再現状態への影響を検討し, データーの相関関数的解析方法によって以下のような結果を得た。
1.前腕部の屈伸運動の再現状態の評価には, 原学習時と再学習時の運動パターンの相関関数的手法が有効で, 定量的に解析可能となった。
2.末梢部を中心とした再学習でのショート・ターム・メモリーは心理学的研究の言語, 記憶学習におけるロング・ターム・メモリー時に生じるレミニセンスと反対の様相である。
3.運動リズムの再現には, 目標リズムより遅いリズム, 即ち全周波数時の値を平均して約0.05Hzのおくれを生じた。
4.再学習時の運動利得は, 0.8Hzの速い運動リズムや, 0.5kgの負荷が与えられた時に, 原学習時と変らぬ利得を示し, 運動利得の良好な再現性を示した。
5.把持率 (偏差率) よりみた再現状態は, 再現経過時間とともに, その率は減少し, 正確性が低くなった。また, 再学習時の運動リズムが0.1Hzから0.8Hzと速くなるに従がつて, 目標リズムに合致した再現運動リズムがあらわれ, 適確な再現状態がみられた。
6.屈伸運動距離を短かくすると再現性は, 向上するが, 記憶上の至適な距離は, 6cmと3cmのほぼ中間と考えられた一
7.身体運動の再現性について運動上のショート・ターム・メモリーの立場から考察を加え, 現場への応用の基礎資料を得た。
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© 日本体力医学会
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