体力科学
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中高年長距離走者の血液有形成分特性
富原 正二小川 新吉浅野 勝己古田 善伯藤牧 利昭矢野 徳郎小原 達朗
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1983 年 32 巻 5 号 p. 259-268

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抄録
本研究は中高年長距離走者の血液有形成分特性を明らかにするため, 中高年マラソン大会参加者 (10km, 25km走) と一般中高年者の血液有形成分の比較検討を行った。
40~82才の男子中高年者790名の血液有形成分に関する結果を要約すると以下のとおりである。
1) 被検者群は対照群の一般人と比べ, 赤血球数が約10%, ヘマトクリット値約9%, ヘモグロビン濃度が約4%低値にあった。
2) 赤血球数, ヘマトクリット値は加令にともなう減少傾向にあり, また高色素性の傾向を示し, 一般老年者の傾向と類似していた。
3) 被検者を10km群と25km群に分けて比較したところ, 40才代の赤血球数, ヘマトクリット値及び40, 50, 60才代のヘモグロビン濃度で両群間に有意差がみられ, 25km群が低値にあった。
4) 網状赤血球は両群問及び各年代問に有意差はみられず, 一般人の正常範囲内にあった。
5) 赤血球浸透圧抵抗性は両群間及び各年代問に有意差はみられなかった。また抵抗幅は若年者や選手の値よりやや低いが, 一般人の正常範囲内にあり, 日常の身体トレーニングによる抵抗性減弱の明らかな傾向は認められなかった。
6) 両群のトレーニング内容では, 1回走行距離で各年代とも有意差がみられ, 25km群が長距離のトレーニングを実施している傾向にあった。
7) 被検者群と対照群の血液有形成分の比較では被検者群の赤血球数が低値にあったが, これは日常の身体トレーニングが影響を及ぼしているものと推察され, 10km群と25km群のトレーニング内容の違いから, 1回走行距離が主に関与しているものと推測された。
8) 被検者の血液有形成分の低値に関しては, 明らかな運動性貧血の傾向は認められず, 一種の適応現象として, 運動時のO2運搬に都合のよい血液粘性を生ぜしめた結果と考えられる。
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© 日本体力医学会
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