体力科学
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体重階級制スポーツ選手の減量の実態について
向笠 由美金子 佳代子小池 五郎桜間 幸次万木 良平
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1986 年 35 巻 3 号 p. 152-160

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抄録
体重階級制スポーツ選手の試合前の急速減量は, 急激な食事制限や水分制限, 発汗によるものであり, 著者らはそれらによる減量について適正な方法についての検討をしてきた.今回は, 体重調整期, 減量期から回復期に至るまでの体構成々分, 特に水分及び窒素の出納の面に着目し, 学生選手権に出場する62kg級のレスリング選手を対象として諸調査を実施した.その結果は次のとおりであった.
各選手の体重は, 体重調整期及び減量期の9日間で4~11%減少したが, 試合終了とともに増加し, 回復期の3日間でほぼ調査開始時の体重に戻った.
各栄養素の平均摂取量は体重の変化に伴い増減したが, 回復期において調整期のレベルで摂取されたのはエネルギー, 水分, ナトリウム, ビタミンAであった.他の栄養素は回復期における摂取に片寄りがみられ, 特に鉄については全期間を通じて所要量を下回っていた.ビタミンB群, ビタミンCについては個人差が大きかった.
食物摂取量についても, 回復期において調整期のレベルで摂取されたものが見当らず, その摂取に片寄りがみられ, 栄養学的に不十分な食事であり, 体重の回復の内容は水分による度合が大きいことが示唆された.
なお, D2O法による被検者の平均体水分量は体重の約68%であった.
窒素及び水分の出納をみると, ともに調整期から減量期にかけて負の出納になったが, 試合終了とともに正に転じ, 体内への蓄積がみられた.しかし, 窒素については, 減量期において失われたものを完全に回復するまでには至らなかった.
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© 日本体力医学会
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