都市および農村地域に在住する高齢者につき, 運動能力検査を行った.対象は東京都小金井市の405名, 秋田県南外村の734名であった.この対象者は, 小金井市は65から84歳までの人口の10分の1無作為抽出者の41%, 南外村の65から89歳の全人口の78%であった.運動能力検査は形態測定, 握力, 片足立ち, 歩行, 指タッピングから構成した.本研究の主要な結果を以下に示す.
1.地域在住高齢者の運動能力の加齢による低下が, 65歳以上でも進行することを確認した.
2.地域在住高齢者の運動能力は, 女性よりも男性で優れていた.
3.最大タッピング頻度や歩行速度は南外村よりも小金井市で高く, スピードに係わる能力には地域差があることが示唆されたが, この差は小金井市のサンプルの偏りに由来する可能性もある.
4.地域在住高齢者の運動能力の個人差は20歳代に比して増加するが, 運動課題によりその増加の程度は異なっていた.
5.高齢者の運動能力間に相関が認められた.加齢により相関係数が増大する能力も存在し, 若年者で認められる運動能力の特異性が高齢者では必ずしも認められないことが示唆された.