抄録
本研究は, 成長期から成熟初期にかけて行う走トレーニングが骨形成にどのような影響を及ぼすのかを, 体重の変化をもとに走トレーニングの開始齢と関連づけて検討することを目的とした.
おもな結果は次の通りである.
1.成長期に行った走トレーニングによって, 骨の長軸方向への成長が抑制された.また, トレーニングを中止した場合, その後negativeな影響は消失した.成熟初期から開始した走トレーニングは, 長軸成長に対して影響を及ぼさなかった.
2.成長期から継続的に行った走トレーニングにより, 脛骨全体, 近位および遠位端のBMDが有意に増加した.19週齢の時点で, 成長期に走トレーニングを行った群が, 成熟期に開始した群よりBMDが有意に高値を示し, トレーニング開始齢の違いによる影響が認められた.
3.脛骨骨幹端部海綿骨において, 成長期に行った走トレーニングは, 類骨率および標識率を増加させる傾向にあったが, 骨量には影響を及ぼさなかった.
4.成熟初期に行った走トレーニングによって, 類骨率が減少したにも関わらず標識率は増加し, 効率よく石灰化が行われた.結果として骨量の増加傾向が認められた.
以上の結果より, 1) 成長期から継続的に行った走トレーニングによるBMDの増加は, BMCの増加とともに骨全体の大きさの増加, すなわち骨の成長が抑制されることによって起きたと考えられた.2) 骨形態計測により, lBMCの増加は類骨の石灰化が効率よく行われるようになったことから生じた可能性が示唆された.