抄録
原発性胆汁性肝硬変(PBC)患者の診断時における門脈域の組織学所見と抗セントロメア抗体(ACA)との関連について検討した.対象はPBC 31例で,Scheuer I/II期の早期群とIII/IV期の進行群に分類し,C型慢性肝炎(CH-C)10例を比較対照群とした.門脈圧亢進を示唆する組織学的所見として,末梢門脈枝の狭小化と異常血行路に注目した.PBC早期群における末梢門脈枝の狭小化率はCH-Cと比較して有意に高く,進行群のそれは早期群に比し高い傾向にあった.PBC早期群をACA群,他の染色型の抗核抗体(ANA)陽性群,ANA陰性群に分類して組織学的所見を比較したところ,ACA群における門脈狭小化率や異常血行路の程度は,他の2群と比較して有意差はみられなかった.以上より,PBC病初期で末梢門脈枝に門脈圧亢進症を示唆する病理所見がみられたが,ACA陽性と門脈圧亢進症との関連は明らかでなかった.