抄録
症例は71歳男性.HCV肝硬変で10数年前に数回の肝生検歴がある.以前より肝右葉の門脈瘤を指摘されていたが,経過観察中に食道静脈瘤の悪化を認め,入院となった.CTでは肝右葉に動脈と同時に造影される門脈血流が確認され,動門脈短絡を伴う門脈瘤と診断した.上腸管膜動脈造影にて門脈本幹から脾静脈への逆流と腹腔動脈造影にて右肝動脈末梢の動門脈短絡を確認.右肝静脈および固有肝動脈にバルーンカテーテルを挿入し,固有肝動脈のバルーンカテーテル閉塞前後の肝静脈楔入圧(WHVP)を測定した.WHVPが20 mmHgから9 mmHgへ低下したため,短絡閉塞は妥当と判断し,右肝動脈A8末梢へマイクロカテーテルを挿入.NBCA+リピオドールの混合液を2回に分けて注入し,シャントの閉塞を得た.治療前後で脾静脈の遠肝性血流は変わらなかったが,食道静脈瘤は半年でLmF2CbRC2からLiF1CbRC1まで改善を認めた.