抄録
症例はC型肝硬変の70歳代の女性.肝細胞癌治療後に昏睡度Ⅱ度以上の肝性脳症を頻発した.血中アンモニア値は200 μg/dl以上であり,造影CTで巨大な脾腎短絡路が認められ,猪瀬型肝性脳症と診断した.内科的治療に抵抗したため,バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)による短絡路閉塞の適応と判断した.流出路は3箇所あることが判明し,3本のバルーンカテーテルで流出路を閉塞した.細かい側副路はマイクロコイルで塞栓した.5%エタノラミンオレート・イオパミドール混合液(5% EOI)を18 ml注入し,カテーテルを24時間留置した.2日目の造影では一部血栓化していたが,新しい側副路が認められたため,5% EOIを15 ml追加注入した.更に翌日までカテーテルを留置したところ,3日目の造影では脾腎短絡路の血栓化が認められた.治療後の造影CTでは脾腎短絡路は閉塞していた.血中アンモニア値は低下し,肝性脳症は消失した.