日本門脈圧亢進症学会雑誌
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症例報告
骨髄移植後に出現した門脈圧亢進症の1例
中原 善朗林 星舟今村 潤木村 公則佐伯 俊一大橋 一輝比島 恒和
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2011 年 17 巻 1 号 p. 37-42

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抄録
症例は48歳男性.1997年に慢性骨髄性白血病と診断,翌1998年に血縁者間同種骨髄移植,再発後の2001年10月に非血縁者間同種骨髄移植を施行した.2回目移植直後より肝胆道系酵素上昇が出現,その後約4年間にわたり異常値が持続し,血小板数も前値まで回復せず徐々に減少した.2007年3月にLi,F1,Cb,RC0の食道静脈瘤とLg-f,F3,Cb,RC0の胃静脈瘤を認め,CTでは肝臓の萎縮と巨大脾腫,左胃静脈─下横隔静脈短絡路が観察された.同年6月に胃上部血行郭清術を施行,同時に施行した肝楔状生検の病理組織所見では門脈域にさまざまな程度の線維性拡大と門脈枝内腔の狭小化を認め,肝静脈周囲にも線維化がみられたが,小葉構造は基本的に保たれており,異常血行路は観察されなかった.また一部の門脈域では小葉間胆管が消失していた.本症例の門脈圧亢進は主として門脈枝の内腔狭窄によるものと想定され,肝静脈周囲の線維化や小葉間胆管の消失も伴っていることから,骨髄移植後に出現した慢性GVHDにより門脈圧亢進症が生じた可能性を否定できないものと思われた.
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© 2011 日本門脈圧亢進症学会
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