抄録
従来,肝切除術では腹腔ドレーンの留置が一般的に推奨されてきた.しかし,近年,無作為試験を含む研究により,待機的肝切除術では腹腔ドレーンは不必要であることや,術後合併症が増加するためむしろ悪影響を与えるなど腹腔ドレーン留置の適応はないとの報告もみられる.一方,胆汁漏や難治性腹水などに対して腹腔ドレーンを用いて治療する症例も少なからず経験する.自験200例の成績の検討の結果,当科での胆道再建を伴わない肝切除術における腹腔ドレーンの考え方は,(1)胆汁漏,腹腔内感染や難治性腹水のリスクが小さい症例,術後穿刺ドレナージが困難でない症例では腹腔ドレーンは省略しうる,(2)腹腔ドレーンを留置する際には閉鎖式ドレーンを使用する,(3)腹腔ドレーン排液に異常所見がみられない場合,術2~3日以内に抜去するとしている.今後も病態や状況に応じた腹腔ドレーンの適応や管理を検討していく必要がある.